1999年度
修士論文・特別研究発表会

マントルの対流構造の変化を考慮した地球熱史の計算

内丸 真吾

はじめに
マントルの対流形式には、マントル全体で対流する一層対流と、上部マントル、下部マントルに分かれて対流する二層対流、それに対流構造が一時的に二層から一層へと変化する間欠的二層対流が考えられている。 マントル物質が上部から下部マントルへと流れていく際に、上下マントル境界において吸熱的相変化による密度変化により、物質に正の浮力が生じる。それにより流れがさえぎられると、対流は二層に分かれることになる。二次元箱型対流モデルによるシミュレーション計算の結果では、上下マントル境界におけるクラペイロンスロープ(温度圧力勾配)が一定のとき、対流の強さを表すRayleigh数が大きい程、対流が二層対流になりやすいことが示された(Christensen and Yuen,1985)。現在のマントルの代表的な物性値を用いてRayleigh数を計算した所、現在の対流は一層対流であるという結果となった。しかし、今よりもずっと高温であり、対流も強かったと考えられる初期地球においては、対流が二層であった可能性も考えられる。
 そこで、本研究では初期地球のマントルが二層対流であったと仮定し、Rayleigh数がある条件を満たしたときにマントルの対流構造を変化させるという方法で、熱史の計算を試みた。

計算方法
 計算にはパラメータ化対流論という手法を用いた。この手法では、系全体の熱収支のみを考え、対流の効果は、対流による熱輸送効率を表すNusselt数と、Rayleigh数との関係式を用いて表す。ここで扱う熱は、核からの熱、上下マントル境界を通る熱、地表面へと放出される熱、それに放射性元素による熱である。
 対流が二層対流のときは、上下各層および核について熱バランスの式をたて、系の温度変化を求めた。求めた温度からマントルの粘性を求め、Rayleigh数を計算し、これが対流変化の条件を満たしているときは一層対流の計算へと移る。一層対流のときは、マントル全体と核について熱バランスの式を立てる。内核の固化が始まるまで核の温度が下がったならば、内核半径の長さも計算し、現在推定されている内核半径の長さと比較する。