1999年度
修士論文・特別研究発表会

マントル対流の水平スケールと熱輸送に対する大陸プレートの分布の影響

柳川 智彦

 本研究は, 地球の活動の長周期変動をもたらす要因としてのマントルダイナミクスに着目し, 大陸と海洋の分布がマントルの熱対流運動のセル構造と熱効率に与える影響を数値モデルを用いて考察した.モデルには2次元でアスペクト比が6の流体層を用いた.流体層の上下境界面には温度固定条件とFree-Slip条件を与え,側壁には反射条件を与えた.流体はマントルを想定して非圧縮で,ブジネスク近似が妥当であるとし,プランドル数は無限大であるとした.大陸は流体層上部に流速が0である領域を置くことでモデル化した.大陸と流体層の境界条件はNo-Slip,Free-Slip両方の条件で計算した.大陸の厚さは一定とした.さらに簡単のため粘性率などの物性値も一定にし,また放射性元素の崩壊による内部発熱もないものとした.超大陸が存在する場合と,小さい大陸が散在する場合を比較するため,大陸と海洋の比は一定とし,同じ長さの大陸と海を交互に置いた.大陸,海洋の長さは0.25,0.5,1,2,4,6,さらに大陸がない場合と全面大陸の場合の8種とし,レイリー数100000,1000000と変化させて,それぞれの場合で平均温度がほぼ一定になるまで対流運動を計算した.
 形成された対流運動には次のような特徴が認められた.まず対流セルの構造に注目すると,大陸の長さがマントル層の厚さより長い場合は,大陸の下に上昇流,海洋の下に下降流ができ,対流セルの水平スケールは大陸の長さと同程度になった.逆に大陸が短い場合は,対流セルの水平スケールは大陸の長さより長くなった. またそれぞれの場合の熱効率をみるためにヌッセルト数に注目した.レイリー数が100000のときは大陸の長さがマントルの厚さと等しい時にヌッセルト数は最大値をとった.レイリー数が1000000では大陸がより長い場合にヌッセルト数が最大値をとる可能性がある.最大ヌッセルト数は大陸の水平スケールが6の場合を基準にすると最大30%増であった.
 大陸がマントルの厚さより長い場合の結果はGuillou等(1995)が提唱したFluid Loopモデルによって説明できた. Larson(1991)は核からマントルへ流れる熱量の変化が引き起こす現象として地磁気スーパークロンを挙げ,その時の熱量は通常より60%高かったと見積もった.彼の説に従うなら本研究の結果から大陸が分布の変化で地磁気スーパークロンを発生させるのに必要な熱量変化の半分程度を説明できる.