英国

2002/09/21(2年前の記憶をたどりつつ), 25, 2003/08/13, 11/21, 2009/07/21(このあたりからは記憶だけでなく本などの情報も加えながら)

私の訪問記録

訪問日訪問地主訪問目的
1 1999/10/04-2000/10/03 Leeds Leeds 大学で sabbatical

言語

当然のことながらイギリス英語。だが、これが曲者。BBC やブレア首相が 話すようなちゃんとしたイギリス英語を話すのは、ケンブリッジや オックスフォードを出たような知識人たちで、普通の人はちょっと 違った種類の英語を話す。方言の変異もかなり激しく、本当の田舎だと イギリス人でさえも聞き取るのが難しいらしい(強い津軽弁や鹿児島弁 のようなものであろう)。この手の英語は日本語では聞く機会が少ないが、 テレビでスポーツ選手や田舎の人のインタビューを聞くとわかる。 たとえば、Man-U のベッカムがふにゃふにゃ喋っているのが 聞き取りにくいのに気付くだろう。

私は、イギリスに初めて行ったとき英語が聞き取りにくいのには ショックを受けた。とくにバスの運転手の英語はよくわからない。 バスの運転手の英語がきちんと聞き取れる人はエライ。 私が行ったのは北イングランドだったせいもあり、人によっては かなり訛りがきつい。滞在するうちにある程度はわかるようになってきたし、 東北弁のような親しみをおぼえるようにはなってきたが。

方言による語彙の違いは、私にはよくわからないが、発音の違いで 比較的わかりやすいのは、たとえば以下のような点である。

きっちりした英語と、普通の人の英語の違いの割とはっきりした違いは t の音である。きっちりした英語では t は、下を上顎につけてきっちり 破裂させる。とくに語中や語尾でもきっちり発音するところがポイント。 これに対し、とくに若い世代などでは、語中、語尾の t は喉で止める ように発音することが多い。たとえば、later は「レイッア」である。 ちなみに、アメリカ英語では良く知られているように語中、語尾の t は「ラ行」に近くなる。たとえば、later は「レイラ」である。

later といえば、標準で「エイ」の発音が、「アイ」に近くなるのも よく見られる。オーストラリアではこれはかなり有名だが、もともと イギリスが発祥の地である。そのばあい、later は「ライッア」で、 mate は「マイッ」である。Hallo, mate! というイギリス流の 親しい挨拶は「ハラウ、マイッ」とある。なお、標準の「エイ」を 「アイ」に近く発音する場合、標準の「アイ」は「オイ」に近くなる。

田舎では h がサイレントになるのもしばしば聞かれる。フランス語や イタリア語で h を発音しないのと関係があるのだろうか?

私が行っていた北イングランドの特徴と言われるのは、綴り字の u が 文字通り「ウ」と発音されることである。標準英語では軽い「ア」である。 たとえば、upstairs は「ウップステアズ」になる。

ビザなど

私は1年間の長期滞在をした。当時 (1999-2000) は、留学のためならば、 銀行の預金証明や受入先の受入承認の手紙などを持っていけば、事前に ビザを取らなくても、入国時に空港係官にそれらの書類を見せると その場でパスポートにビザの印を押してくれた。

しかし、2003 年 11 月に事情が変わったようである。6 か月以上の滞在では 「エントリークリアランス」なるものを 入手する必要が出てきた。これは EU 入国規定が新しくなったことに対応する 措置だそうだ。

詳細は以下のような web sites を参照のこと。

治安、麻薬、非行など

凶悪犯罪はとくに多くはなく、少なくとも Leeds くらいの地方都市であれば 夜中に出歩いても問題はない。

ただし、イギリスは、空き巣と車両の盗難や車両荒らしが先進国中では 極めて多い。ほとんどすべての家に防犯ベルが付いているし、ほとんど すべての自動車では駐車中にハンドルロックを付けている。 ただ、防犯ベルがどの程度役に立っているかは疑問。街中で防犯ベルが 鳴っているのを聞いたことはあるが、人々は平然と歩いていた。 私の知っているイギリス人某学生が、私の滞在期間中に大学寮で 盗難にあった。玄関の錠が比較的簡単に壊せるものだったのが原因。 ゲーム機などが盗まれた。

麻薬は、日本に比べて極めて蔓延している。大学生でも、けっこう 軽いドラッグを試してみたことがあるというのがいて、ショックを受けた。 私にも平然と「ドラッグをやったことがあるか?」と聞かれたので驚いた。

未婚の妊娠がヨーロッパ先進国で最も多いのも特徴。 ビクトリア朝時代のモラルの厳しさはどこへやら、今や自由を 謳歌するあまり、いろいろ問題を生じている。 そういうところは日本と共通する意味もある。

金と物価

物価は先進国どこでもそう大きく変わるものではない。しかし、 為替レートによってだいぶん印象も変化する。私が滞在していたとき (1999-2000)、1 ポンドは 180 円くらいから始まって 160 円くらい までに下がって、だいぶんものの値段が安くなったと思ったのだが、 今 (2003 年) では、1 ポンド 190 円になってしまっているので だいぶん高いのではないだろうか。

イギリスは、アメリカ同様クレジットカードが普及しており、旅行者には 大変便利である。スーパーマーケットの買い物でもクレジットカードで 支払いをする人が多い。見ているとそこかしこでサインをしている。 ATM も 24 時間営業で数も多い。シティバンクのカードを持っていれば、 レートはあまり良くないが、すぐに現金を引き出すことができる。

シンクとバスタブ

イギリスに行って気付いたことは、台所のシンクと風呂のタブは同じ構造をしていて 同じように使うものだと言うことである。

台所のシンクには、まず全体にたっぷり水をためる。シンクの中で別の洗い桶を使ったりはしない。 だから、イギリスのシンクは比較的小さめである。これに洗剤を入れて、 洗うべき食器をまとめて沈めて洗う。すすぎはあんまりしないで、そのまま乾かす。

風呂の使い方も同様である。バスタブにお湯を入れて体を沈め、石けんで洗う。 その後シャワーを浴びるとは限らず、バスタオルで泡ごと体を拭く。 だから、バスタブの外に体を洗ったり流したりする場所は必要がない。

[参考文献] 林望「ささいなる文化」 in 「イギリスは愉快だ」(文春文庫 は 14 3)

花火

花火はイギリスにもある。というより、日本の花火の発祥は、1613 年にイギリス人が 徳川家康に献上したものらしい。その花火は、手筒花火で、今でも三河などではその伝統が 残っている。

イギリスの花火と日本の花火の最大の違いは、イギリスの花火は冬に楽しむもので、 日本の花火は夏に楽しむものだということである。イギリスに行って 11 月 5 日の Guy Fawkes Night の花火大会に連れて行ってもらって驚いた。 花火自体は今や日本とそう変わらないが、寒い中で見物するのが大きな違いだ。 Guy Fawkes Night というのは、1605 年 11 月 5 日、Guy Fawkes が、 英国議会の上院議場を爆破しようとして未遂に終わった事件を記念するものである。 その日には、the Guy という人形を燃やして盛大に花火を行う。英国の花火は、 寒さを吹き飛ばすための派手なものというイメージである。なお、「男」を意味する guy という言葉は、この Guy Fawkes から来ているらしい。もっともイギリス人は chap の方を良く使うと思うけど。

あと、イギリスで花火を上げる日は大晦日から新年への年越しである。これは、 最近日本でもやるが。

[参考文献] NHK TV トラッドジャパン 2009 年 7 月号 「花火」 pp.86-117

スポーツ

イギリスで人気があるスポーツと日本で人気があるスポーツはだいぶん違う。 サッカーは、日本でも最近は人気があるから共通だけれど、それ以外はだいぶん違う。 オリンピックの中継を見ていても(私は 2000 年のシドニーオリンピックをイギリスで 見ることが出来た)、ボートや馬術などがたくさん放送されているのが新鮮だった。

イギリスではテレビでよく放映されているが、日本でほとんど全く見られないものに snooker と darts という室内ゲームがある。どちらもルールは知らなかったが、 見ていると何となくわかってくる。

snooker は、一見ビリヤードなのだけれど、違うもので、 ルールの解説は Wikipedia 日本語版「スヌーカー」に載っている。 世界選手権などを(だいたいイギリス人ばかりなのに!)放映していた。 私が見ていたときは (2000 年頃)、トッププレーヤーがウェールズ出身だったりして まるで何を言っているか分らない英語を話していたのが印象的だった。

darts は比較的単純だから、見ているとルールがわかる。 点数読み上げの節回しが独特で印象的。これまたルールは Wikipedia 日本語版「ダーツ」に載っている。

[参考文献] 林望「一人の男と彼の犬」 in 「イギリスは愉快だ」(文春文庫 は 14 3)