ぼくが電話をかけている場所
Raymond Carver著、村上春樹訳
原題:以下の短編集などから選んできたもの
- What we talk about when we talk about love
- Will you please be quiet, please?
- Furious seasons
- The Randam Review, 1982
- The New Yorker, Mar.15, 1982
中公文庫 C30, 中央公論社
刊行:1986/01/10(ハードカバー版は 1983, 中央公論社;原著は 1977, 1978, 1981, 1982)
名大内で廃棄してあったものを拾った
読了日:2001/08/28
以下の短編が収録されている。
- ダンスしないか? Why Don't You Dance?
- 出かけるって女たちに言ってくるよ Tell The Women We're Going
- 大聖堂 Cathedral
- 菓子袋 Sacks
- あなたお医者様? Are You A Doctor?
- ぼくが電話をかけている場所 Where I'm Calling From
- 足もとに流れる深い川 So Much Water So Close To Home
- 何もかもが彼にくっついていた Everything Stuck To Him
Carver は初めて読んだ。作品はちょっとした心の動きを描いている。
ちょっと普通と違う事件が起る。そこで、言葉では言い表しにくい
精神の動きが起る。それは激しい感情ではないから、読んでいてすごく
感動するということはない。何か微妙な感情の変化がおこる。
その繊細な綾を作家はすくい取ろうとする。
たとえば、最初の「ダンスしないか?」は次のような話である。
男が庭に寝室セットを並べてガレージセールをしている。そこへ
若いカップルが通りかかる。二人がベッドに寝てみたりしていると、
ガレージセールの男が現れ、酒を振る舞ったり、レコードを
かけたりする。娘は、相手の若者や、男とダンスをする。
その時の様子を、娘が後日人に語る。しかし、
でもどれだけしゃべっても、相手に伝えられない何かが残った。
彼女は何とかそれをうまく表現しようと、しばらくのあいだ試みていたが、
結局はあきらめることになった。
そういう、うまく伝えにくいこと、がこの短編集の主題である。
普通なら忘れてしまいそうな感情、よく理由の分からないわだかまり、
そういったものは、考えてみると何だろう?作家は分析しない。ただ
提示するだけだ。