ぼくが電話をかけている場所

Raymond Carver著、村上春樹訳
原題:以下の短編集などから選んできたもの 中公文庫 C30, 中央公論社
刊行:1986/01/10(ハードカバー版は 1983, 中央公論社;原著は 1977, 1978, 1981, 1982)
名大内で廃棄してあったものを拾った
読了日:2001/08/28

以下の短編が収録されている。

Carver は初めて読んだ。作品はちょっとした心の動きを描いている。 ちょっと普通と違う事件が起る。そこで、言葉では言い表しにくい 精神の動きが起る。それは激しい感情ではないから、読んでいてすごく 感動するということはない。何か微妙な感情の変化がおこる。 その繊細な綾を作家はすくい取ろうとする。

たとえば、最初の「ダンスしないか?」は次のような話である。 男が庭に寝室セットを並べてガレージセールをしている。そこへ 若いカップルが通りかかる。二人がベッドに寝てみたりしていると、 ガレージセールの男が現れ、酒を振る舞ったり、レコードを かけたりする。娘は、相手の若者や、男とダンスをする。 その時の様子を、娘が後日人に語る。しかし、

でもどれだけしゃべっても、相手に伝えられない何かが残った。 彼女は何とかそれをうまく表現しようと、しばらくのあいだ試みていたが、 結局はあきらめることになった。
そういう、うまく伝えにくいこと、がこの短編集の主題である。

普通なら忘れてしまいそうな感情、よく理由の分からないわだかまり、 そういったものは、考えてみると何だろう?作家は分析しない。ただ 提示するだけだ。