カンブリア紀の怪物たち(シリーズ「生命の歴史」1進化はなぜ大爆発したか)

Simon Conway Morris著、木下智子・遠藤一佳訳、松井孝典監修
原題:Journey to the Cambrian: the Burgess Shale and the explosion of animal life
講談社現代新書 1343, 講談社
刊行:1997/03/20
名大鶴舞の古本屋で購入
読了日:2001/08/26

カンブリア紀の化石の研究で有名な Conway Morris による Burgess 頁岩の化石動物群とその周辺の化石動物群の解説。

Burgess 頁岩の化石動物群については、以前の NHK スペシャル「生命」やら S.Gould の Wonderful Life で有名になった。テレビでの アノマロカリスの泳ぐ姿や、Wonderful Life の 「カンブリア紀に現在よりもはるかに多様な生物がでてきて、 進化の"実験"がなされ、それらのうちのごく少数が偶然的に 生き残って現在の生物につながっている」という過激な主張は 非常に印象に残っている。

Conway Morris は Gould のような過激な主張は誤っていると議論している。 Burgess 頁岩の動物群はむしろ通常の進化の一断面として捉えられる、 ということである。たとえば、ウイワクシアは環形動物の祖先種であり、 アノマロカリスは原始的な節足動物である、等々。Conway Morris は Gould と違って、収斂進化の重要性を強調し、「私は、ある一定の範囲内では、 進化プロセスの結果は予測可能であると考えるべきだと思う」と主張している。

いずれにしても Burgess の動物たちは想像力をかきたてられる奇妙な 生物群で、この本はそのコンパクトで平易な紹介となっている。