かしこいリサイクルQ&A

加藤三郎編著
岩波ブックレット No.531、岩波書店
刊行:2001/03/19
東京浜松町の本屋で購入
読了日:2001/05/04
参考書

武田邦彦「リサイクル幻想」
文春新書 131、文藝春秋
刊行:2000/10/20
名古屋一社駅前の文京堂書店で購入
読了日:たぶん 2000 年末


以下では、加藤 (2001)を(K)、武田(2000)を(T)と略す。
家電リサイクル法のようなものが出てきて、リサイクルへの関心が ますます高まり、本がいろいろ出ている。結構なことである。しかし、 リサイクルに対する立場はいろいろに異なる人がいる。 上の2冊はまったく異なる立場で書かれている。(T)の方は しばらく前に読んだので、忘れてしまったことも多いが、思い出す範囲で 書いておく。

加藤三郎は、元環境庁の役人で、その後、NPO「環境文明21」の代表。 その経歴にふさわしくというべきか、(K)では、日本のリサイクルの 現状と考え方を平易に解説している。最近リサイクル関連法がいろいろ できていることをこれで初めて知った。それらを並べておくと、

21世紀に入って、日本もリサイクル社会に突入したことを感じさせる 法律群である。(K)では、これらに関する易しい解説がなされている。

一方で、(T)は、「リサイクルしてはいけない」と説く。 たとえば、紙やプラスチックは、燃やしてしまって、 発電と熱生成(コジェネレーション)に使ってしまうのが良いとする。

いずれの本も、もちろん環境に負荷の少ない道を探ろうとしているのに、 このように考え方に大きな隔たりが出てしまうのは、環境問題の難しさを ものがたっている。何が正しいかを見定めるためには、物質とエネルギーの 循環の全システムを考えて、定量的に価値判断をする、ということが 不可欠である。リサイクルにかかる費用で判断するというのは、 一つの手ではある。しかし、金はこういう問題の価値判断に対しては、 あまり良い指標でない。

判断や評価を下すには、これらの一般向けの本だけでは、いかんせん情報が 少なすぎる。たとえば、ゴミ発電問題にしても、現状ではゴミの量が 安定しないために、安定した電力供給ができないなどの問題があると聞くが、 (T)ではそれに触れられていない。また、(K)では、全体的なシステムに 関する記述が少ない。


2001/10/27 追記

昨日、国立環境研究所の森口祐一氏の MFA (Material Flow Analysis) や LCA (Life Cycle Assessment) の講演を聞いた。その中で、武田氏が 以前に書いた本「リサイクルしてはいけない」に関する話題も出てきた。 この武田氏の主張には問題があるとのこと。やはり、LCA のような 定量的分析をしてみて初めて「リサイクルしてはいけない」のかどうか わかるのであって、上の本のような定性的な話に終始していては、 リサイクルが良いとも悪いとも両方の議論ができてしまう。 むろん、やみくもにリサイクルしてはいけない場合も確かにあるが、 それがすべてではない。その点で、やはり(T)や(K)のような ごく一般向の薄い本では、リサイクルの本質がなかなかつかめない、 ということを改めて感じた。