昔話の深層―ユング心理学とグリム童話

河合隼雄著
講談社+α文庫 P880, 講談社
刊行:1994/02/18(ただし、文庫の元になったものは 1977/10 福音社書店刊)
名大内で廃棄してあるものを拾った
読了日:2001/08/03

高名な心理学者である河合氏が、ユング心理学で10編のグリム童話を 解釈したもの。物語を無意識の世界や自己実現と結び付けている。

私がユング心理学の考え方をほとんど知らないせいか、それほど 心にぴったりくる感じがしなかった。そういう解釈もあるのだな、 という感じだ。実際に心理療法のようなことをやっていないと、 実感するのは困難なのだろう。無意識の世界があるのは確かなこと だと思うが、実際は、ここに書かれているよりも、もっと 重層的なのではないかと思ってしまう。ここに書かれていることでも、 「無意識」の問題と「人間の成長」や「自己実現」などの問題とを 一見自然にからめて書いてあるが、この2つの関係がどうなのかは あまりわからない。それは、昔話というものが、そもそも無意識の 領分と人生訓的な領分を併せ持って成立しているからで、それを きちんと分析するには、より多面的な視点を複合することが 必要なのだろう。