扱っている題材は、いつものように進化論をめぐるもので、 社会問題を扱うときはいつものように非常にリベラルな姿勢が貫かれている。 小天体による絶滅やエディアカラ動物群など古生物学最先端(もちろん これは書かれたときの最先端で、今となってはちょっと古いと言えるかもしれない) の話があると同時に、大リーグの4割打者がいなくなる理由に関する考察が あったりする。一方で、ダーウィンが進化論に目覚めたのはビーグル号の 航海中ではないという科学史の論証があり、他方で、トウモロコシと ブタモロコシの間の関係という植物の形態と系統に関係する話があったりする。 それらのどれもが進化という大きな問題のまわりに関係付けられて 論じられている。
ずっとその前のエッセイ集も読んでいると、基本的な題材の種類は 全く変わっていないことがわかるのだが、常に新しい題材を使って 飽きさせないようになっている。先頃、残念なことにグールドは 亡くなってしまったが、私はまだ読んでいないエッセイが たくさんあるので、当分楽しめそうである。