地球環境報告

石弘之著
岩波新書 新赤版 33, 岩波書店
刊行:1988/08/22
名古屋黒川の古本屋BOOK-OFFにて購入
読了日:2002/05/25
世界のさまざまな環境問題についてのレポート。これが書かれた時代は、 酸性雨はすでに大問題となっていた(本書でも扱われている)ものの、 二酸化問題を代表とするいわゆる「地球環境問題」がクローズアップされる 前で、自然破壊や公害を中心とする環境問題を扱っている。とくに 発展途上国の貧困や人口増加とからんだ問題が主体である。 最近、発展途上国であるケニアに旅行に行ったばかりなので、実感が強く感じられて 興味深かった。発展途上国問題は
貧困→人口増加→過度の焼き畑など→土壌の劣化、流出→農地の減少→貧困
あるいは
国の経済悪化→先進国の企業や産業の誘致→公害の輸入、自国産業の崩壊 →国の経済悪化
といった感じの悪循環にまとめられる。人口の増加を止めるとか、教育水準を上げて 自国産業を育成するとかしないとどうしようもないのだが、いったんはまってしまうと どうにもならなくなるというのが良く分かる。

この時代に土壌流出などの環境問題が最も大きかった国々 (たとえば、エチオピア、スーダン)は、最近では 政情がおそろしく不安定で、そちらのほうがニュースになり、 環境問題の話はあまり聞かなくなった。 しかし、政情不安定の要因の大きなものはもちろん上のような 悪循環にあるわけなので、環境問題がなくなったわけではないはずだ。 これらの国々に脱出の道はあるのだろうか?