要点をまとめると、次のような手順で、研究やら会議やらを進めてゆけ、という 教えである。
1年生用の基礎セミナーで実践してみると良いのではないかと思って やってみたが、私の説明不足でやや失敗した。私も自分でやってみたが、 なかなか分類に迷うところがあって難しい。KY 氏(学生) 曰く 「KJ 法はえいやと思いきって分類してみるところが良い所ですよ」 むべなるかな。とはいえ、分類してみるのは時間はかかるが、 けっこう楽しめることは確かである。1年生は、私の説明不足もあり、 面倒くさがっていたようであるが。
KY 氏 (学生) によると、立花隆氏は、KJ 法は非効率的であると批判して いるのだそうな。まあ、確かにいちいち紙に書くのは時間がかかる。 慣れた人なら頭の中で全部やってしまうであろう。ただ、川喜田氏は とくにグループで仕事をする場合を想定しているわけで、そういう ときは、お互いの認識を確かめ合うため、あるいはお互いに意見を 述べ合うために KJ 法のような道具立ては有効なのであろう。 何か別の機会があれば、もう少し試してみようかと思う。
ただ、この本の思想は、少し薄い感じがする。気付いたことを3つ挙げる。 (1) 著者の発想法が abduction であると言っているが、Pierce の abduction と著者が書いていることとは違う。著者は Pierce を読んで いないのではないか。(2) カードの分類のところで、 先入観にとらわれずにデータに語らせる、ということが書いてある。 ところが、一方で、科学哲学では、先入観(理論)がゼロでは ものごとが何も見えないことが明らかになっている。 このへんの関係は著者は何も意識していないようである。 (3) しばしば、「日本人は」「外国人は」「男性は」「女性は」 という民族をステレオタイプ化する言葉が出てくる。この手の ステレオタイプ化は底が浅いことが多いので、私は好きではない。 もっとも、著者は文化人類学者だから、根拠が十分にあるのかもしれないが。