ある人が推薦していたので、買って読んでみたら、とても良い本であることが 分かった。民主主義国家がプロパガンダを用いていかにうまく悪事を 働くかを、非常に明晰な口調で暴露している。湾岸戦争やイラク戦争が 如何に欺瞞的であるかをはっきり述べている。むろん日本も同罪である。
以下、印象的な部分を引用しながら感想を書き連ねてゆくことにする。
(1) 二大政党制について
二大政党といっても財界という党の二つの派閥にすぎないのである。 国民の大半は投票にも足も運ばない。わざわざ行くほどの意味があるとも 思えないからだ。彼らは社会の動きから取り残され、うまいこと関心を そらされている。少なくとも、それが支配者の狙いなのだ。これはもちろんアメリカの話だが、日本もこの状態に近づいていることは 明らかである。最近、二大政党制が良いと議論するマスコミが多いが、 彼らも財界に籠絡されているに違いない。
(2) 湾岸戦争の不当性について
ところで、湾岸戦争はなぜ起こったのだろう。戦争の理由はいちおう あげられていた。侵略者が報いられることは許容できないし、侵略があれば 暴力に訴えてもすみやかに侵略者を追い返さなければならない―これが 湾岸戦争の理由だった。これ以外に、基本的な理由は何もあげられていない のである。日本では、湾岸戦争は国連も賛成した「良い戦争」のように語られることが 多いが、国連を金科玉条のように言うのも考えものである。だが、こんなことが戦争を始める理由になるのだろうか?アメリカは、 そんな原則―侵略者が報いられることは許容できないし、侵略があれば 暴力に訴えてもすみやかに侵略者を追い返さなければならない―を掲げているのか?
(中略)
アメリカは自国のパナマ侵攻に反対して、侵略者を追い返すためにワシントンを 爆撃するべきだと主張しただろうか? 1969年に南アフリカのナミビア占領が違法だと裁定されたとき、アメリカは 食糧や医薬品について制裁措置をとっただろうか?
(3) 2度の対テロ戦争について(1度目は 1980 年代、2度目は 2000 年代の現在)
火星人なら、ほかにも第1次対テロ戦争と第2次対テロ戦争の間に、興味深い 類似点があることに気付いたかもしれない。2001年には、思いつく限りの テロ国家が対テロ連合に参加した。その理由は明白だ。対テロ戦争をやる国家はテロ国家である。冷静な人は、テロという言葉に たいした意味がないことを知っているはずである。ロシアがなぜこれに熱心なのかは、誰でも知っている。自分たちがチェチェン などで実行している恐ろしいテロ行為に関して、アメリカの承認というお墨付きが ほしいからだ。
(4) 「悪の枢軸」の意味について
しかし(環境について)人々は意に介します。人々は孫たちに地球を残したい。 だからこそ、政府はそこに注意を引きたくないんです。完全に逸らしておきたい。 ワシントンでは国民に対する大掛かりな攻撃が行われている。そこに人が 目を向けないように、どこか別のところを向いていてほしい。どうすれば いいか。恐怖に陥れればいいんです。人々をコントロールする最良の方法は 恐怖を利用することです。だから、もしも我々を滅ぼそうとしている「悪の 枢軸」が存在するならば、人々は恐怖におびえて四の五のいわず、指導者の いうがままになり、指導者が人々にしていることにいちいち神経を尖らせる ことはあるまい、とこのように考えているのです。日本でも、アメリカに従えという論拠として、昔のソ連脅威論に変わって、 現在は北朝鮮脅威論が流布している。これも恐怖によるコントロールなので、 冷静に考える必要がある。
(5) 日本に対するメッセージ
この50年を含む前の世紀には、日本が記憶に留めておくべきことが 数多くあります。何度もいうようですが、他人の犯罪に目をつけるのは たやすい。東京にいて「アメリカ人はなんてひどいことをするんだ」 といっているのは簡単です。日本の人たちがいましなければならないのは、 東京を見ること、鏡を覗いてみることです。そうなるとそれほど安閑と してはいられないのではないでしょうか。われわれも良くものを考えなければならない。