日本の美を求めて

東山魁夷著
講談社学術文庫 95, 講談社
刊行:1976/12/10
長野県信濃美術館東山魁夷館で購入
読了日:2003/08/11

長野の東山魁夷の美術館を見たついでに買った。 エッセイと講演数編を収録したもの。 東山魁夷の絵を頭に浮かべながら読むと、確かに魁夷らしい くだりが随所に現れて面白い。しかし、論説として読むには 全然物足りない。もともとエッセイやら講演やらだから、 味わって読むというより、さっと読んで雰囲気を味わえば良し という性質のものだろう。画家だから当然ではあるが、 やはり文より絵の方が深く語っている。

以下、面白いと思う部分をいくつか引用

エッセイ「自然と色彩」より

日本の海を、群青と緑青の色だと私は思ったのだが、それは群青に緑青を まぜることによって得られる微妙な色感を意味する。以前に描いた 新宮殿の壁画「朝明けの潮」は、この群青と緑青の相当粗い分子の 岩絵の具を混合した濃彩の画面であった。

講演「山雲濤声」(障壁画を描いた唐招提寺での講演)より

天生峠へと向かう。(中略)それは、御影堂の上段の間の構想として、 私が過去に旅した山々での体験から、胸裡に描いていた風景を遥かに超える 素晴らしい眺めであった。峠の到る処で殆んど忘我の状態で見つめていた私は、 この風景を何者かに命じられているのを感じた。