世界の英語を歩く

本名信行著
集英社新書 0217E
刊行:2003/11/19
京都タワーのふたば書房で購入
読了日:2003/11/22

いまや国際語となった英語は、ネイティブ、ノンネイティブを含め さまざまなバリエーションがあることが紹介され、日本人も 堂々と日本なまりの英語で世界に発信しようということを語っている本。

まず、世界の英語にどういう変異があるのかが紹介され、 それがその国の風土や文化と密接に結び付いていることが説明される。 英語が国際語になった以上、変異が起こるのが当然だし、 それを許容しなければいけないことが説かれる。 文化の違いはそれを伝える英語に自然に反映されることを理解し、 それを認めるとともに、自国の文化が自らの英語にどう反映されているかを 他の文化の人々に説明する能力も身に付けなければならない、と主張している。

たとえば、アメリカには「きのうはどうも」という習慣はないけれども、 べつに Thank you for the dinner last night. と言って構わないじゃないか、 というわけである(とはいえ、私はイギリスでは、人々がこれに類することを 言っているのを聞いたような気がする)。ともかく、文化の差は お互いに堂々と主張し、英語をしゃべるからと言って無理に英米の文化に 合わせる必要はない、という主旨である。

私も、この主旨には賛成でその通りだと思う。文法にも文化にも 気を遣えなどと言われたら、疲れて英語を喋りたくなくなることに 間違いはないだろう。また、イギリスに行って、 人々が方言丸出しで話しているのを耳にして、正しい英語の発音や 文法をこころがけていたのが馬鹿馬鹿しく思えたこともある。 文化の差異に寛容になるのが国際交流の基本であるというのは、 その通りである。

ただし、ものごとには限度があるはずだ。発音に日本なまりが あって良いと言っても、あまりひどいと通じなくなる。文法も 多少日本人の癖が残って良いと言っても、あまりひどいと通じなくなる。 そのあたりの International English のガイドラインが ほとんど示されていないのが少し不満だ。この本では、 一方では英米の英語に縛られる必要はないと言いながら、最後には やっぱり「安易に考えるな」ということが出てきて(それも当然なのだが)、 では一体どのへんが目標なのかが不明確である。