特集 泥沼化するイラク情勢とアメリカのジレンマ

論座 2004 年 1 月号、朝日新聞社
原雑誌:Foreign Affairs 2003 年 9/10, 11/12 月号
翻訳:竹下興喜(監訳)、入江洋、藤原朝子、西直史
名大生協で購入
読了日:2003/12/14
イラク情勢に関する以下の論説集。アメリカの論説なので、ブッシュの責任は あまり問われず、これからどうすべきかという現実的対処の問題が語られている。

以下、それぞれの議論のサマリー

(AWD):アレン・ダレスが第二次大戦の後でドイツ占領の困難を報告したものを 今のイラク情勢の参考にしようという趣旨で載せられたもの。 2つの大きな問題が語られている。一つは人材不足で、優秀な人材は 旧ドイツ政府と少しは関わりがあった人ばかりなので、公職追放の厳しい ルールを適用するとだれも人がいなくなる。そいう意味で問題がない人は、 長く海外にいてドイツの事情に疎い人ばかりということになる。 二つ目の問題は、ロシアの占領政策が評判も悪く、意図も分からない ということである。

(LK):ワシントンは来年の大統領選挙をにらんで拙速にものごとを 進めようとしている。一方で、ゲリラ戦が続いており、治安は非常に悪い。 取りうる選択肢は二つしかない。(1) 任務を国際化して、重荷を軽くする。 (2) 長期の駐留を覚悟し、段階的にものごとを進める。

(MSO):イラクにはいろいろな思惑の勢力があって、憲法の起草の方法が難しい。 議会を作るのが先か、憲法を作るのが先か?である。議会を先に作ろうとすると、 多数派のシーア派が有利になるから、他の勢力は反対するだろう。憲法を先に 作ろうとすると、誰が作るのか、という話になる。一つの提案は、 二段階アプローチである。まず制憲議会を選挙で組織するための暫定憲法を作る。 そうやって制憲議会を作っておいてから、ちゃんとした憲法を作ることだ。

(CFR):イラクの債務に関する問題のレポート。たとえば、債務を帳消しにする 考え方としては、アレキサンドル・サックスが 1927 に表明した議論を紹介して いる。「独裁政権が国の必要性を満すためにではなく、独裁制を強化しようと 試みた結果生じた債務は、国民にとって憎むべき債務である。 こうした債務が(独裁政権後の)国を拘束することはない。それは 独裁政権がつくり出した債務であり、独裁政権の消滅とともになくなる。」

以上のような感じで、現実的な議論である。日本が自衛隊を派遣する前に、 そもそもアメリカは (LK) のどちらの選択肢を取るつもりなのか、 はっきりさせてもらいたいものだと思う。