ブルバキ―数学者たちの秘密結社

Maurice Mashaal 著, 高橋礼司訳
原題:Bourbaki, Une soci\'{e}t\'{e} secr\`{e}te de math\'{e}maticiens
シュプリンガー・フェアラーク東京
刊行:2002/12/28(原著は 2002)
原出版社:Editions Pour la Science
名大生協で購入
読了日:2003/03/01

ブルバキと言えば、図書館の本棚にずらっとならんでいる「数学原論」が 思い出される。でも、私自身は、おそれ多くて、というより難しげだったし、 ちょっと参考書として使うにしても途中から読める雰囲気の本ではなかったので、 ほとんどお世話にはならなかった。でも、この新刊が本屋に並んでいるのを見て、 ブルバキがどういうグループだったのかを知りたくなり買ってみた。

ブルバキは 1934 年に作られたフランスの若い数学者のグループで、 もともとは解析学の教科書を現代化するプロジェクトだった。 その計画が膨らんで、「数学原論」が書かれた。また、数学セミナーとして 「セミネール・ブルバキ」が現在に至るまで続けられている。

今から見ると、いわゆる古き良き時代だったのだなあと思う。 「ブルバキ」という架空の名前でメンバーを秘密にして本を書くことなど、 今の論文重視の業績主義の下ではほとんど考えられない。 そんなことに力を入れていると、いわゆる「業績」が挙げられなく なってしまう。しかし、教科書を作るということで徹底的に議論することは、 おそらく非常に楽しい経験だったであろうし、ブルバキメンバーの 研究にも結局は役に立ったのではないかと想像できる。 名前を隠すのも、メンバーのやる気さえあれば、第一著者を 誰にするなどの不毛な争いを避けるのに良かったのであろう。