この巻は、北野天神縁起絵巻をメインとして、寺社の縁起絵巻の世界を 楽しめるようになっている。絵巻物は、ここにあるような解説付で見ると、 アニメのようなもので、興味深く見ることができる。 もともと絵巻物は物語と絵の組み合わせなので、絵だけを切り放せないのは 当然ではあるが。
今まで天神さんの由来を、単に菅原の道真の霊を慰め、学問の神様として 崇めるという程度にしか知らなかったので、以下のような来歴を 知ったのはちょっとした収穫。もともと天神は雨を降らせる雷神で、 農耕生活において非常に重要な神であった。道真の死後、清涼殿に 雷が落ちたことから、道真と雷神が結び付いて、道真が天神になった ということになった。しばしば、天満宮に牛があるのは、 もともと農耕における聖なる動物である牛を昔から天神に捧げていたということと、 道真が丑年生まれで丑年に死に、亡骸を牛車に引かせたということで、 結び付けられたものである。室町時代には、禅宗において、天神さまが 中国にわたって参禅したという伝説ができて、禅宗の流布に使われた。 道真が詩文の神様であったということと、当時の文化の中心地の中国が 結び付いたものであろう。実際の道真は唐に行ったことはない。
中にあった森村泰昌のエッセイより
菅原道真の得意技は落雷だった。エレキである。それで私には、 「北野天神縁起絵巻」に描かれた、道真率いるカミナリ族による 「イテマエ」攻撃の模様が、エレキギターがうなるロックコンサートのように見える。