私にとって岡本太郎は、画家彫刻家というよりは、 文章を通じたアジテーターである。それほどに彼の文章は 魅力的である。勢いがあって逃げがない。 たとえば、ここにも収録されている有名な
今日の芸術は、でもわかるように、芸術に対する自分の信念をストレートに ぶつけていて気持ちが良い。 この本でも、収録されている岡本太郎の文章は、 残り半分の他の人によるエッセイや評論を圧倒している。
うまくあってはいけない。
きれいであってはならない。
ここちよくあってはならない。
岡本太郎の前衛は歴史軽視ではない。民族学を学び、 縄文や沖縄の美を発見するという一面も持っている。 それは次の信条に基づいている。
過去によって現在があるのではない。逆に現在があって、 はじめて過去があるのだ、というふうに考えるべきだ。 そういう手続きを、とかく人は見あやまっている。 だれでもが、自分の現在、その生命力と情熱から過去をつかむ。 それが伝統だ。