ほんとうの英語がわかる―51の処方箋―
Roger Pulvers 著、上杉隼人訳
新潮選書、新潮社
刊行:2001/03/15
東京浜松町の BOOK STORE dan にて購入
読了日:2003/03/25
新 ほんとうの英語がわかる―ネイティヴに「こころ」を伝えたい―
Roger Pulvers 著、上杉隼人訳
新潮選書、新潮社
刊行:2002/05/15
名大生協にて購入
読了日:2003/03/25
以下、新でない方を I、新の方を II と略す。
日本語のわかる英語圏の人が書いた英語の本は、文化の違いや
言語と関連した心の動き方の違いがわかっていつも興味深い。
もちろん、本当は誰が書いたかわからないような軽い
ハウツー物では駄目だけれど。この2冊の本はもちろん
真面目に書かれている方の部類に属するから、いろいろ
興味深い言語の違いが書いてある。
I では、英語らしい 51 の単語を集めて、その単語の語源とか
その単語にかかわる表現とか文化的な背景とかを説明しつつ、
英語による表現の方法を説明して行くという趣向。たとえば
argument という言葉。まず、西洋社会では論争 (argument) が
良く行われる、という話から始まり、日本の「喧嘩」に
近い言葉が argument なんじゃないかという考えが示される。
そのあと、argue の語源の説明を軽くして、argue のいくつかの意味が
示される。「例証する、明らかにしようとする」「論争する、
主張する」(このあたりは、科学論文でも使われる)「賛成か反対か
論議する」「強く反対する、怒りの言葉を浴びせあう」(この
最後のものが「喧嘩」にあたる)の大きく4通りである。
II では、英語のニュアンスとか音色がどういうところに現れて
来るのかを説明している。一つ興味深い部分を挙げると、
英語と日本語の特性の違いがだいたい以下のようにくっきりと述べられている。
-
英語は、ほとんど同じ意味を表す単語の種類が非常に多い。たとえば、
「高価だ」ということを表すのに、expensive, dear, pricey, costly,
exorbitant などがある。日本語にももちろんやまとことば起源の
「高い」と漢語起源の「高価だ」があるが、英語の方が数が多い。
しかも、日本語では、日常会話においてはほとんど「高い」が
使われるのに対し、英語では、日常会話でふつうに多様な同義語が
使われる。
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もちろん、これは日本語にニュアンスが豊かでないという意味ではない。
日本語においては、ニュアンスは語尾の「ね」「だよ」といった助詞の類や
微妙な抑揚で表現される。これに対し、英語では単語や表現そのものを
変えることによってニュアンスを出してゆく。
このことは、私も英語の勉強や話をしていて感じていて、この本では
それを的確に述べていると思う。英語を勉強していると、ボキャビュラリーを
増やしても増やしても後から後から出てくる感じでうんざりする。
一方、話をしていて、「ね」などを付けて親しみを出すようにしたいなあと
思っても、英語でそういった間合いの取り方をどうしたらよいかわからずに、
言葉に詰まることもしばしば起こる。やはり外国語の「こころ」まで
わかろうとするとけっこうな努力が必要そうである。