東海のことば地図

竹内俊男著
六法出版社
刊行:1982/10/01
名古屋栄の丸善での古本市で購入
読了日:2003/09/29

朝日新聞の記者が東海地方の方言について、 新聞に連載したものをまとめたものらしい。 そういうものなので、必ずしも体系的ではないけれど、 あちこちに興味深いエピソードを散りばめて、 東海地方の方言の諸相が書かれている。

私がいま見聞きする範囲では、名古屋方言はだんだんと なくなりつつあるようで、なかなかこの本で書かれているような 典型的な名古屋方言はあまり聞かない。 でも、このあたり出身の人の中には、ことばの端々に こちらのアクセントやことば遣いが出る人がいて、 それがだんだん最近わかるようになってきた。 そういったことを思い浮かべながらこの本を読むと、 非常に興味深い。

この本に出てくる最初の話は、日本の東西アクセントの境目が 揖斐川にあるというものだ。その説明は、もともと日本語のアクセントは 東京式であったのだが、近畿を中心にあたらしい関西式のアクセントが 周辺に向かって進出してきたというものだ。そう考えると良い理由: (1) 西日本の中国地方のアクセントは東京式である。東京と中国地方で 独立に似たアクセントが発達したとは考えにくい。 (2) 東から アクセントが変化したとすると、アクセントの境目は木曾三川の一番東の 木曾川になりそうなものである。木曾三川の一番西の揖斐川に境目が あるということは、変化が西から起って東へ伝播したと考えるのが自然。

このようになるほどと思わせる話がいくつか書かれている。