充ち足りた悪漢たち
赤川次郎著
文春文庫 あ 1 6、262-6、文藝春秋
刊行:1984/05/25
文庫の元になった連載:1981/03-1982/02 婦人と暮し
文庫の元になった単行本:1982/05 文藝春秋刊
廃棄してあったものを拾った
読了:2004/11/03
久々の休日(先週末は休めなかった)だったので、つい手に取って一気に読了。
全部で6つの短編からなる。赤川次郎ものはいつものように軽快で楽しく読める。
内容は、平気で悪いことをする子供の話なので、本当はコワ〜い話に
なりうるのだが、赤川次郎が書くとコワくならない。よく考えてみると、
子供の怖さを描くというよりは、本質的には子供の悪事に振り回される大人の
無様さをユーモラスに書いているからだろう。
たとえば、第2話「わが子はアイス・キャンデー」。アイス・キャンデーとは
高利貸し(氷菓子)のこと。浩という子供が金貸しを始める。すると、
先生や両親までが、人に言えない理由があってこっそり浩に金を借りることになる。
最後には、浩は先生や親の借金をチャラにしてあげた上で、
利子は金で取るばかりが能じゃない。両親と担任教師の弱味を握っているんだ。
これこそ最高の利子じゃないか!
廊下を歩きながら、浩は口笛さえ吹いていた。
として小説が終わる。これでわかるように、大人のドタバタ物語を、
子供というキャラクターを借りて笑ってみせるというユーモア小説なのである。