以下、それぞれの作品について。
これはクリスマスの愉しい雰囲気に乗せて書かれている。 子供の殺人事件ごっこがあって本当の殺人事件はないし、 クリスマスのおいしそうな食卓が出てくるし、最後には 正直な女中が出てくるというわけで、なかなか洒落ている。
事件解決のアナロジーに、シェイクスピアのオセロを 出してくるのが気が利いている佳品。
事件解決に催眠術を使うのは反則(?)という気がしないでもない。 最後に犯人をはっきり見つけるときに、犯人をちょっと罠にかけるところは 刑事コロンボを思い出した。コロンボのようの倒叙物にしたら 犯人の心理劇として面白いかもしれない。
題名の「二十四羽の黒つぐみ」がマザーグースから来ていたとは 巻末の解説を読むまで気付かなかった。 本文中に注釈を入れてもらいたいものである。でも、 そのマザーグースの英語の詩を web で探して見てみたら、 そういえば歌として聴いたことがあったことを思い出した。 そして、どうしてこんな題名になっているのかもわかった。
Sing a song of sixpence,
A pocket full of rye;
Four and twenty black birds
Baked in a pie.When the pie was opened,
The birds began to sing;
Was not that a dainty dish,
To set before the king?
ある種の密室殺人事件なのだが、自殺に見せかける道具立ての 工夫が良くできている。一見自殺以外の可能性が考えられない ようになっている。
これだけマープルもの。ジェイムズ・バリー (James Matthew Barrie) の 劇を解決のひとつのヒントに使っているところがマープルらしいのだが、 残念ながら私はこの名前を知らなかった。でも web で調べてみたら 「ピーター・パン」の原作者だった。イギリスでは、他の作品も有名なのだろう。