「国家破産」以後の世界
After Japan's Default

藤井厳喜著
光文社ペーパーバックス 048、光文社
刊行:2004/12/20
三省堂書店成田空港店で購入
読了日:2004/12/18(何と公式刊行日の2日前!)

現在の日本政府の財政が国債という名の借金まみれになっているのは 周知の事実である。この事実を前にして、もうすぐ破綻するよと警告する人と、 ぜーんぜん心配ないとのんびりしたことを言う人とがいる。この本は 前者の立場から日本の暗い将来を描いている。私はといえば、 後者の立場にはとても説得力があるとは思えないので、 やっぱり将来の心配しつつこういう本を読んでいる。

私のような大学教員は、公務員ではなくなったとはいえ、国から お金をもらって働いていることには変わりはないので、国家が破綻したら 失業かなあと思いながら読む。現在のように、インフレでもなく円の価値も そこそこある社会状態で失業したら、しばらく風来坊でもしていようかとも 思うのだが、国家が破綻した状態で失業すると海外逃亡でもせざるを得なくなるの かもしれない。それはそれでひとつの人生だろうとは思うが。

本の話に戻れば、本書では、現在の日本の財政の惨状を導いた原因は、 田中角栄による「社会主義革命」の負の遺産であると見ている。 無駄な公共事業やら腐敗の構造はこのあたりに大きな源がある。 田中角栄とか小泉純一郎とか、マスコミに人気のある首相は、 どうして斯くもろくでもない遺産を残すのであろうか?

本書のメインな部分は、すでに破綻を経験した国家の例を挙げながら 日本の将来を考察している部分だ。アメリカの経済植民地になるのか? 中国の属国になるのか?アルゼンチンの崩壊は腐敗が招いたものだった ―日本も同様か?ロシアは危機を体験した―日本人にはロシア人ほどの サバイバル力があるのか?韓国社会はハードランディングにより激変した ―では日本社会は?メキシコは田中派的疑似社会主義政策によって破綻した ―日本も同じ道を行っているのでは?とまあ、こういったことを挙げていくと いろいろ暗いシナリオが描けるのである。