地震と噴火の日本史

伊藤和明著
岩波新書 新赤 798、岩波書店
刊行:2002/08/20
名大防災アカデミー会場で購入
読了:2004/10/16
名大の講演会シリーズ「防災アカデミー」で伊藤氏が講演をされた際、 会場にてサイン入りで購入した。本書は、明治以前の地震や噴火災害 (主として江戸・明治期のもの)について 20くらいの事例を集めたもの。講演ではこの本に書かれていることのうちで、 とくに地震に伴う山体崩壊等の土砂災害を、最近の事例も含めて紹介していた。

この本にもあり講演にも紹介されていた災害のうちで、私がいままで知らず 印象的だったのは、「飛越地震と立山鳶崩れ」の話だった。 飛越地震は、1858 年 4 月に起こった M7 の内陸地震で、跡津川断層が 動いたものとされている。直接の被害もさることながら、重要な土砂災害があった。 地震に伴って、立山連峰の大鳶山、小鳶山が山体崩壊を起こし、立山カルデラの 底に向かって流下した。なお、立山カルデラは侵食カルデラであり、昔から このような崩壊が数限りなく起こっていたことを示している。鳶崩れは 直接の被害以外に次のような後遺症を残した。まず、土砂が川を堰き止め 自然堰堤が何箇所もできた。これらの川は常願寺川の上流部に当たる。 地震の2週間後と2ヵ月後の2回にわたって自然の堰堤が決壊し、下流の 富山平野に大洪水を起こした。以来常願寺川は暴れ川となり、洪水が多発する ようになった。それで、常願寺川の上流域は日本の砂防事業の発祥の地となった。 地震の影響がかなり後まで及ぶという印象的な例である。

私が伊藤氏の講演を始めて聞いたのは学生のときで、御嶽山の山体崩壊の話だった。 記憶が定かでないが、岩屑なだれの話を聞いたのもそれが初めてだったように思う。 岩屑なだれの話は伊藤氏のライフワークともいえるものだろう。