マイケル・ムーアがよくわかる本

天野由衣子 編集長、榎浩一 編集
TJ MOOK、宝島社
刊行:2004/09/19 (発売は 2004/08/19)
名古屋東山の東山書店で購入
読了:2004/09/22
話題の映画「華氏911」を見たので記念に買ってみた本。まあ、宝島社の MOOK なので週刊誌みたいなもの。軽く読み飛ばして、マイケル・ムーアが どういう人物なのか何となくつかむというもの。 インタビューやムーアの作品の紹介などを中心に構成されているから、 映画論としての深みがあるわけではない。

おもしろいのは、ムーアを単に絶賛したのではない記事。ここには2つ載っている。

デーブ・スペクターに対するインタビュー
デーブ・スペクターは、ムーアの映画には事実歪曲が多い、あるいは 見せ方にずるい点が多いと言っている。この程度の記事では、私には 判断のしようがないが。
森達也に対するインタビュー
森氏は、ドキュメンタリーを撮っている映画監督。ムーアは明快で それはそれで良いけど、森氏自身はそういうやり方はしないと言っているのが 興味深い。森氏は、正義と悪の二分論は嫌いで、被写体と自分とが 影響を与え合いながら弁証法的に発展してゆくのが好きだと言っている。 このような言葉には私も共感を覚えるものがある。いつもテレビや週刊誌が ものごとをAと反Aの対立軸に納めたがるのに、私は違和感を覚えるからだ。 それは時としてものごとの本質を損なう。

ともあれ、「華氏911」は、それはそれとして楽しめる作品だ。 ある程度売ろうという映画である以上、エンターテインメント性と わかりやすさが必要だし、それは十分に満されている。 ユーモアがあると同時に、イラク戦争の場面では数々の衝撃的場面もある。 ドキュメンタリーという意味では、偏りも大きいのだが(たとえば、 イスラエル問題には全く触れていない)、映画だからそんなに冷静な 視点でなくても良いんじゃないのという気もする。 偏りや作為をどこまで許すかは難しいけれど。