風の呪殺陣

隆慶一郎著
徳間文庫 り 3-1、徳間書店
刊行:1992/01/15
文庫の元になった連載:1986/10-1987/01 問題小説
文庫の元になった単行本:1990/02 徳間書店刊
廃棄してあったものを拾った
読了:2004/11/18
捨ててあったのを拾って、つい読み始めたら止まらなくなって、 2、3時間で一気に読了。実に面白く書けている。

織田信長の比叡山焼き討ちを辛くも生き延びた3人の若者が、 恨みを抱いてその後どう生きるかを活き活きと描いている。 比叡山焼き討ちは、まさに大虐殺であった。

百日行を果たせなくなった修行僧の昇運は、信長を呪い殺すことを誓い、 亡者を呼ぶ技を修得する。これは直接は信長には通用しなかったが、 明智光秀を謀反に走らせ、本能寺の変を導いた。変の時、人とは思えないほど 痩せてしまった昇運の命も尽きた。

親と妹を殺された谷ノ坊知一郎は、やがて傀儡子(くぐつ)の一団に入り、 自由人として生き始める。伊勢長島の一向一揆に加わり信長の軍勢を 相手に獅子奮迅の活躍をする。最後は何処ともしれぬ所へと去る。

比叡山焼き討ちの時は頼りない小僧だった好運は、少女美鈴が信長の 雑兵に惨殺されたのを期に成長し、やがては仏法の修行に邁進し 阿闍梨になってゆく。

このような若者たちの活躍と成長を描いた大活劇である。ところで、 最近のイラクでの大量殺戮の報を聞くにつけ、ブッシュや小泉を 呪い殺したいと思う若者も、自由人として抵抗したいと思う若者も、 宗教に生きようとする若者もきっと出ているに違いないと思う。


後日 (12/07)、機会があって比叡山延暦寺を見に行った。 江戸時代以降の建物しかないのは、この信長の焼き討ちのせいらしい。 歴史が浅いのが歴史の証拠になるとはね…。