高原まり子「壮絶なる星の死」ノート


星の化学組成による分類

主系列星の光度と寿命

主系列星の光度 L と質量 M には
L ∝ M^3.45
という関係がある。

水素燃焼の期間(主系列星の期間)は(水素の核融合で発生するエネルギー)/ L であり、 (水素の核融合で発生するエネルギー)∝ M と考えると(厳密にはそうではない)、

(主系列星の期間)∝ M^(-2.45)
である。きちんと計算すると、太陽が主系列にいる期間は 80 億年、 9 Msun の星では 3000 万年、20 Msun の星では 550 万年である。 その他の期間を加えると星の寿命がわかる。ただし、主系列の期間が一番長いので、 上とそうかわらない。太陽の寿命は 100 億年、9 Msun の星では 3500 万年、 20 Msun の星では 600 万年になる。

星の進化の最後の姿

M < 0.08 Msun褐色矮星
0.08 Msun < M < 0.45 MsunHe 白色矮星(He は燃えていないので、C, O が出来ていない)
0.45 Msun < M < 7 MsunC, O 白色矮星(C, O が出来ている)
7 Msun < M < 8 Msun炭素爆燃型超新星(後に残らない)
8 Msun < M < 10 Msun重力崩壊型超新星(後に残らない)
10 Msun < M < 40 Msun重力崩壊型超新星、残りは中性子星
40 Msun < M重力崩壊型超新星、残りはブラックホール
(なお、境目の質量はそれほど厳密ではない)

超新星の分類とモデル

Ia 型

連星系で一方の星が C+O 白色矮星であるとする。この白色矮星に、もう一方の星から 質量が降着する。じわじわ降り積もると、やがてチャンドラセカール質量を超え、 炭素燃焼が暴走し、炭素爆燃型超新星となる。

Ib 型

質量の大きい星 (18-25 Msun)が何らかの理由(たとえば連星系の質量交換)で 水素の外層を失った後に、超新星爆発を起こしたもの

Ic 型

He 外層まで失った星の超新星爆発か?定説がない。

II 型

鉄のコアが重力崩壊を起こす。重力崩壊してゆく鉄のコアが中心にできた中性子コアに ぶつかるときに衝撃波が発生する。衝撃波で物質が熱せられ膨張して爆発に転じる。 これが II 型超新星爆発である。中心には中性子星が残る。重力崩壊で解放される 重力エネルギーを外層の熱エネルギーに与えるのはニュートリノだと考えられているが、 しかし現在でもニュートリノによるエネルギー輸送の計算をするとうまく爆発が起こらない。

超新星 SN1987A

1987 年 2 月、超新星 SN1987A が大マゼラン雲で爆発。近代天文学開始以来、 最も明るい超新星だった。

観測とその解釈

  1. 元の星は青色超巨星。重元素が少ない星が、いったん赤色超巨星になったあと、 青色超巨星になったのだと解釈されている。
  2. 日本の KAMIOKANDE、アメリカの IMB でニュートリノが検出された。 全エネルギーから、中心に中性子星ができていることが示唆された。
  3. 初期の光度曲線は異常。爆発したのが青色超巨星であったことと、 星の内部での物質の混合を考えると説明できる。混合はレイリー・テイラー不安定で 起こりうる。
  4. 120 日後くらいから光度は指数関数的に減少。これは、56Co の 崩壊で説明できる(56Co は 56Ni が崩壊したもので、 やがて最終的には 56Fe になる)。56Co の崩壊による γ線やX線も観測された。
  5. 500 日後くらいから赤外線が増光。これは星間塵の形成によるものとして説明できる。
  6. 水素のスペクトルが観測されたことから(II型超新星)、元の星に水素の外層があったことがわかる。 元素組成としては、太陽に比べてヘリウムと窒素が多いのが特徴。
  7. 星のまわりにリングが観測された。これは、赤色超巨星のときの星風に、 青色超巨星のときの星風が後ろから衝突してできたのだと解釈されている。

超新星 SN1993J

1993 年 3 月、超新星 SN1993J が大熊座 M81 で爆発。近代天文学開始以来、 2番目に明るい超新星だった。

観測とその解釈

  1. 元の星は赤色超巨星。
  2. 水素のスペクトルが観測されたことから(II 型超新星)、元の星に水素の外層があったことがわかる。 しかし、光度曲線に2つピークがあり、強いヘリウムのスペクトルが観測されたことから、 水素の外層の少ない Ib 型超新星に近いと解釈されている。