石油地質学概論 第2版

氏家良博著
東海大学出版会
刊行:1994/03/30
名大中央図書館で借りた
読了:2004/06/07
これまた教養講義のための読書の一環。教養講義で資源の話をしようと思って、 石油の地球科学の本を探してみたのだが、日本語でそこそこちゃんと 書いてあるものとしては、この本しか見つけられなかった。 日本では石油があまり取れないし、上流側の石油産業も発達していないので、 出版も至って低調である。

この本は、石油地質学の基礎知識を、ごく教科書的に淡々とまとめたもの。 各章のまとめも要領良く、整理はきちんとしてあるので、比較的読みやすい。 ただ、ストーリーがあるというものでもないので、おもしろくもない。 基礎用語とか基礎知識を得るという目的には良いと思う。

石油の成因に関して分かるのは、ふだんの生活に必須のものの割には、 あまりよくわかってないな、ということだ。少なくともこの本を読む限り、 石油の成因が、生物起源のケロジェンの変質によるということまでは わかるのだが、それ以上の具体的なイメージがあまりない。 具体的というのは、どういうところに棲んでいたどういう生き物が埋まって、 といったような「見てきたような」ストーリーだ。言い換えると、地質学の 面白い部分が欠けている。冷静に考えると、それは当たり前かも知れない。 そもそも液体だから、固体なら保存されるような証拠が消えてしまうし、 もともとの生物の状態からさまざまな変質過程を経て出来たものだから、 元の物質の痕跡の多くが消えてしまっている。さらに、一口に石油と 言っても、実は採れる場所ごとに千差万別のものなので、 そもそも統一的に具体的なイメージを持って成因を議論できるものでも ないかもしれない。

とはいえ、そもそも石油とは上記のような複雑なものであるということさえ、 私は良く知らなかったので、それがわかったのは収穫だった。