裁きの終わった日

赤川次郎著
文春文庫 262-5、文藝春秋
刊行:1983/05/25
文庫の元になった連載:1980/07-1980/12 「オール讀物」
文庫の元になった単行本:1980/12 文藝春秋刊
廃棄してあったものを拾った
読了:2005/03/29
つい逃避で読み始めたら数時間で読破してしまった。それだけ良くできた 推理小説。本格推理小説らしく、複数の筋の殺人事件や悪事が絡まって、 事態を複雑にしている。それらの関係が結構緊密なのがおもしろいところ。 最後の第4章で話が終わったように見せながら、最後の最後のエピローグの ほんの5ページで大きなどんでん返しが起るのもしゃれている。 読者に「え?」と思わせて、さっと引いている。

赤川次郎らしく後味の悪さを消す工夫もいろいろなされている。 殺人事件がたくさん起るのにもかかわらず、殺される人の人物描写は ほとんど行わないか、もしくは結構悪人にしているので、それほど 嫌な思いをしなくて済む。女性の不倫も2件入っているのだが、 一人は殺されることにして、もう一人は夫が軽い仕返をすることにして、 適当にうまいこと始末を付けている。他にもいろいろあるが、 要するに話に書かれている範囲で適度なバランスで勧善懲悪を行うことで、 不条理な嫌味を消し去っているのである。 それで物語全体として「裁きが終わった」ことになっている。


以下、いわゆるネタバレだが、殺害・傷害の整理。 上のように書くと、それぞれの筋がバラバラに見えるが、これらの筋が 親族関係、権力闘争、男女関係などで巧みに組み合わされて全体を構成している。