特集 謎の男 マルセル・デュシャン

芸術新潮 2005 年 2 月号
新潮社
名大生協で購入
読了日:2005/08/02
Duchamp はある意味で 20 世紀美術を代表している。数々の実験的な試みを 行って、美術界を駆け抜けた。後半生はあまり作品を作っていない。 展覧会が行われたのを記念しての特集。

初期にはセザンヌのような絵を描いていたとは知らなかった。 23 歳頃までは印象派の画家のようである。24 歳になって一挙に キュビズムの画家になり、25 歳には問題作「階段を降りる裸体 No2」 を描く。さらに「大ガラス」の原型を描き始める。26 歳から 34 歳くらい までがレディ・メイドの時代で、例の「泉」もこの時期の「作品」。 レディ・メイドの時期と重なって 28 歳から 36 歳まで「大ガラス」の 製作を行う(未完)。「大ガラス」と言えば東京大学駒場にどういうわけか レプリカが置いてあった。超有名な作品が1点だけそこにあったのが 妙な感じだった。で、ここまで行ってしまうと、その先がだんだんなく なるみたいで、以後作品製作のペースが極端に落ちる。この本で初めて 知ったもうひとつのものは「遺作」。こっそり作っていたそうで、これも また意外な驚きのある作品である。

Duchamp は情熱の人ではなくて、知の人だったのだろう。それで、 思いつくことをいろいろ試してみた挙げ句、そのうちにそれを越えることを 思いつかなくなって、後半生には作品製作をあまり行わなかったのではないかな。


特集以外でおもしろかった記事

(1) 「紙の博物館」にあった、紙布製のつぎはぎだらけの袢天のはなし (青木玉「着物あとさき―着ぬいた末)

(2) 洋風建築は「懐かしい」のに対し、日本家屋は当たり前に知っているけど 懐かしいとは思わないという感想(橋本治「ひらがな日本美術史― 美術とはかんけいないかもしれないもの」)