グレート・ギャツビー(華麗なるギャツビー)

Francis Scott Fitzgerald 著、野崎孝訳
原題:The Great Gatzby
新潮文庫 フ 9 1、新潮社
刊行:1974/06/30
原著刊行:1925
廃棄してあったものを拾った
読了日:2005/09/25
しばらく昔にどこかで拾って積んであった。それが、東大地震研の川勝さんによる 「グレート・ギャツビー」に関東地震が出てくるのを知ってた? という話を聞いて、読んでみようかという気になった。

件の関東地震は最初の方(文庫版では 3 頁目、ページ番号は 7 ページ)に 出てくる。それは、ギャツビーを最初に紹介している部分で比喩として 用いられている。

人生の希望に対する高感度の感受性というか、まるで、一万マイルも 離れた所の地震さえ記録する複雑な機械と関連でもありそうな感じである。
この一万マイルも離れた所の地震が関東地震であろうというわけである (詳細は上記の川勝さんのページ参照)。

この小説の本題はもちろん地震ではない。本を全部読み終わってみると、 むしろ上の地震の比喩はちょっと大袈裟すぎるんじゃないかという感じがする。

で、この小説の眼目はといえば、アメリカの諸相を衝突させて 絢爛たる悲劇を構成したということにあるのだと思う。 アメリカの金持ちたちの怠惰でちょっと頽廃的な空気の中で、 Gatsby と Daisy の間の恋が悲劇へと突っ走る。 Gatsby は、中西部出身でもともと貧しかったが成り上がって金持ちになった。 中西部の農民の愚直さと堅苦しさをずっと持っている一方で、 成金になるときに怪しげなことに手を染めていることも示唆されている。 語り手の Nick も中西部出身だが、もともと金持ちの家の出である。 最後に Gatsby の良さと性格を最も良く理解したのがこの語り手の Nick で、 他の東部の金持ち連中の薄情さと対比されている。Nick は最後には 東部に適合できないと感じて故郷へと戻る。Daisy と Tom の夫妻は もともと金持ちで、金持ち独特の軽率さや皮相の美しさと内面との ギャップがある。こういった諸々の対比が絡まりつつ衝突して 金持ちのきらびやかさが暗転するダイナミズムがこの小説の命となっている。

最初の方を読んでいるときは読みにくい小説だと思ったが、 最後の悲劇へと流れて行く奔流の部分は圧巻であった。


主な登場人物のまとめ

Nick Carraway 小説の語り手役。中西部の金持ちの家出身。現在は Long Island の West Egg に住んでいる。
Jay Gatsby主人公。Nick の隣の豪邸に住み、 しょっちゅうパーティを開いている。実は親は貧農。つまり、 Jay は成金。
Daisy BuchananNick のまたいとこ。
Tom BuchananDaisy の夫。金持ちの家出身。Long Island の East Egg に住んでいる。
Jordan Baker女性プロゴルファー
George Wilson自動車修理工場経営
Myrtle WilsonGeorge の妻。Tom の愛人

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