本書ではとくに年金制度に焦点を絞って、これまで年金制度の粉飾が 次々に行われ問題が先送りになってきていることを丁寧に説明している。 過去の大盤振る舞いのツケが先送りされ、保険料引き上げと給付引き下げが 数年おきに行われるということが繰り返されてきた。2004 年の改正も その続きにすぎない。
著者は、年金を一元化し、拠出税方式にすることを提案している。 これは、民主党や社民党が考えていたものとほぼ同じものである。 私は、実のところこれまで一元化の提案の理由がよくわかっていなかったのだが、 これで納得ができた。今のように一元化していないと、転職すると 著しく不利になるので現代の社会システムに合わないのである。 さらに、企業の負担も賃金総額に対する税という形にすれば、 今のようにパートを増やすという方向の圧力が減る。
民営化が粉飾の手段であるということも初めて知った。道路公団の例を見ると、 大きな赤字を出していた本州四国連絡橋公団には、いつの間にか公的資金が 注入されるとともに、他の公団に吸収させることで赤字が見えなくなってしまった。 さらに、道路4公団の不良債権は保有機構に隠された。そのうち、これは 税金で埋め合わされるであろう。
これを読むと本当に呆れた話だと思うのだが、上のようなことを やってきた小泉政権がまだしばらく続きそうだから、ものごとは しばらく変わらないのであろう。