日中はなぜわかり合えないのか

莫邦富 (Mo Bangfu) 著
平凡社新書 270、平凡社
刊行:2005/05/10
名大生協で購入
読了日:2005/05/19

最近のマスコミには反中、嫌中の風潮が強い。 小泉首相はまた中国を刺激するようなことばかりしている。 これはどうもおかしいと思っていた。

本書は日本を良く知る中国人である著者が、中国社会の最近の変化と 反日感情の高まりの関係について書いている。 マスコミの報道はとかく靖国とか教科書に偏っていて、それ以外のことが 良く見えないものが多いのに対し、本書は社会的な背景を主に書いてあって 全く違った冷静な視点を与えてくれる。昨今の報道を見ると、 私には中国を見下したものが多いように思える。それに対し、本書を 読むと中国が確かに変化の途上にあり、将来中国が アジアナンバーワンの国になることを予感させる。

本書の内容を短くまとめてみると次のようになるであろう。 中国の社会や政治は少しずつ着実に変わってきている。その背景には インターネットの普及、所得の向上などさまざまなことがある。 そういったことを日本人はちゃんと見ていなくて、中国を見下したような 感覚でいる場合が多い。日本政府の日中交流に対する認識や努力は足りない。 一方で中国に進出する日系企業も中国の社会や文化を理解しようとする姿勢を 欠いており、日系企業の評価は低い。

この本の著者のように日本語を達者に操り日中交流を進めようとする 中国人がいる一方で、中国を良く理解する日本人が政治家にも評論家にも 少ないような気がする。