郵貯崩壊

仁科剛平著
祥伝社
刊行:2004/11/01
名古屋名駅の三省堂名古屋高島屋店で購入
読了日:2005/08/22

選挙の前に郵政民営化のことを勉強しておこうと思って買った。 数時間で読み終わった。読みやすく書かれている。小泉民営化をけちょんけちょんに けなしてある。

主張は明快である。郵貯は国債・財投(債)といった官の不良債権を大量に 抱えている。民間の基準で言えばすでに倒産していると言ってよいような 状態である。それを民営化すれば、たちまち倒産しかねない。倒産しても 350 兆円(郵貯だけなら 230 兆円)もの巨大マネーなので、そもそも 預金保険機構に入れず何も保証が無いかもしれない。最も憂慮されることは、 国債が暴落し、日本がアルゼンチン化する引金を引いてしまう可能性がある ということである。

私の知る限り、こういう懸念に対する満足な回答は政府によっては与えられていない。 今回の選挙で小泉を勝たせてはならないし、勝ってしまって民営化法案が 通ってしまったりなんかしたら郵便貯金を引き上げてもっと安心な預金先 (あるいは投資先)に移すことを考えないといけないと思った。頭が痛い。

著者は、郵政民営化の隠された意図を次のように見ている。破綻した 「りそな」や「あしぎん」は国有化している。一方、郵政は民営化しても 金融のプロがいないので、民間のような運営がそのままではできない。 そこで両者やその他の地銀を郵貯に吸収させるつもりではないか、というのである。 郵貯はスケールがでかいので、民間の銀行の不良債権はすぐに覆い隠せてしまう のである。

日本の財政はすでに破綻しているので、国債が暴落する可能性はいつでもある。 そのきっかけとなるシナリオはいくつか考えられる。そうすると、 郵貯・簡保はたちまち倒産する。このとき民営化していれば、政府は何も補償の 必要がない。すなわち、今までの政府の失政を郵貯に押し付けることができる のである。失政のツケはすべて国民に、というわけである。