人格障害の時代
岡田尊司著
平凡社新書 229、平凡社
刊行:2004/06/15
名古屋栄のマナハウスで購入
読了日:2005/04/28
近頃の社会問題の原因ともなっている人格障害を解説してあり、とても
啓発的である。人格障害は、一言で言えば、子供から大人への成熟が
うまくいっていないためにおこる人格の障害である。だから、誰しも子供時代の
残滓をひきずって生きているという意味で言えば、すべての人は
程度の差こそあれなにがしかの人格障害を持っている。それは、
書かれているような人格障害の例を自分に当てはめてみるとよくわかる。
ただ、人格障害と呼ばれる人々はその程度が大きいだけのことである。
人格障害であっても、それを逆に生かせる能力と環境条件が整っていれば、
社会に貢献することもある。が、負の面が多く出れば、周囲の人々を
困らせ、本人も苦しむだけの結果になる。
この本によると、最近は人格障害が増えているらしい。
その理由をいろいろ挙げてあるのがおもしろい。とくに実存主義的価値観や
資本主義をその中に挙げているのは、強引な議論であるような気もするけれど、
ある面では真実である。実存主義に関係するキーワードは「自分」「今」、
資本主義に関するキーワードは「欲望」「幻想」「自己愛」等々である。
過去を失った空虚、殺那的な欲望、それらを補うための幻想、そういったものが
境界性あるいは自己愛性の人格障害を生む。