降積円盤、相対論的アウトフロー、衝撃波と粒子加速という3つのテーマが の理論的基礎が取り扱われている。全体の流れは分かりやすく書かれており、 門外漢の私にもだいたいわかった。しかし、この本の薄さにしては、少し 詰め込み過ぎの感じもあり、本当に良く分かった気がするかというと そうでもないところも多い。分からないのは、私がきちんと式変形も追わずに、 いわば「寝転んで」読んだせいもあるのだが、必ずしもそれだけでもない。 以下のように、全体的にもう少し丁寧に説明してもらえたら本当に 「寝転んで」読めるのになあ、と思うところがあった。
私は降積円盤については、別の機会にある程度詳しく聴いたことがあるので、
この本のどういうところが分かりづらいかも何となく指摘することができる。
たとえば、以下のようなところである。
(1) 著者が理論家であるせいもあって、観測との関連とか物理現象の
イメージ図や表がコンパクトすぎる。降積のイメージも図 2.1 だけで
初めての人にわかるかどうか?たとえば、8の字は何か?[Roche lobe のはず]、
円盤はどこにあるのか?ジェットとの関係は?等々の疑問が湧きそう。
(2) 式変形がコンパクトすぎる。たとえば (2.25) の導出は「寝転んで」
いたときはよくわからなくて、あとで以前のノートを引っ張り出してきて
わかった。実は、必要な情報は一応全部本に書かれているのだが、情報が
分散していて、何を使ったのかがわからないだけであった。
(3) 専門家が「こんな感じ」と考えるところの説明が不十分。たとえば、
p.28 の降積円盤のエネルギー解放が最大になる半径を求めるときに
r2Q+ を使っている理由がはっきりわからない。
たぶん、距離のスケールを対数で考えていてエネルギー解放を
r2Q+ d(ln r) と見ているのだろうと思うが、
こういうのははっきり書いて欲しい。