国債暴落

高田創・住友謙一著
中公新書ラクレ 26、中央公論新社
刊行:2001/11/25
名古屋熱田の古本屋 BOOK OFF 熱田国道1号店で購入
読了日:2005/09/05

国債が大量に発行されて、このところ長い間国債暴落の危険性が取り沙汰 されながら、実際はそれほど暴落していない。このあたりの構造を 冷静に分析してある本。今度の選挙の争点の郵政民営化と深く関わって いそうなので、読んでみた。私は経済に明るくないので、言葉がよくわからない ところも結構あったが、それでも雰囲気はだいたいわかるように書かれている。

バブル崩壊後、大量の国債が発行されたが、これはバブル崩壊後、民間で 金が回らなくなったのを官が補完したと見ることもできる。逆に国債が 大量発行されていなかったら、金融機関の運用難がより厳しくなっただろうと 著者は見ている。つまり、民間で運用できるお金が急減したので、 資金を郵貯に吸い取ってそれを国債という形で国が吸収し、民に代わって 運用してあげた、ということである。その借金は将来世代が負担するという 構造である。その意味では、現在までの巨額の国債残高をそれほど 悪いこととは見ていない。国債発行は、バブル崩壊のショックを将来に 分散して和らげるものであったとする。ただ、もちろんこれからも このまま国債残高が増え続けるのは良くないとしている。

著者は大恐慌後のアメリカと現在の日本を対比してみている。アメリカは ニューディール政策で大恐慌を克服したかのように言われることも多いが、 実はそうではなくて、本当に回復したのは、第二次世界大戦後、世界市場が 大きく広がってからである。これに朝鮮戦争などの軍需が加わって、 ようやく景気が回復した。恐慌から回復まで 20 年くらいもかかっている。 日本経済の回復もこれと同じ時間スケールで回復するならば、本格回復は 2010 年頃ということになる。

そのアメリカとの比較もあって、これからの課題は景気がある程度回復した後の 国債管理政策であるとしている。この本は 4 年前のものだが、 さて、この点で郵政民営化を考えてみると、大量の国債を抱える郵貯・簡保を 民営化するということは、国債管理を難しくするセンスである。国内だけで バランスが取れていた官セクターの金の流れを海外に渡して不安定化する危険もある。 その意味でも、小泉改革と称するものは訳がわからないし、 リスクを増やすものである。