脱日本のすすめ―米・韓連合を破る戦略

霍見芳浩著
KAPPA BUSINESS 10-141、光文社
刊行:1987/03/30
名古屋黒川の古本屋 BOOK OFF で購入
読了日:2005/05/28

20年も前の政治経済を論じた本でありながら、内容が 古くさくなっていない。その後状況が多少変わったとはいえ、 根幹の部分はたぶん今でも生きている。

本が書かれた当時は、ロン・ヤス外交で日米関係が最も良いなどと言われたり、 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」(1979) が書かれたりしていたときで、 いわば、日本が有頂天になっていたときであった。 しかし、この本が的確に指摘しているように、中曽根外交などというのは お粗末極まり無いものであった。バブル景気の原因もここにあるし、 日本の半導体産業が凋落する一因もここにあった。 20年経ってみると、中曽根外交のお粗末さがはっきりしていて、 霍見氏の分析が正しく、多くのマスコミや評論家が誤っていたことがよくわかる。 その割に、いまだに中曽根元首相を持ち上げるマスコミが多いのは信じがたい。 日米関係が良いとされる時代は将来に禍根を残すであろうということは、 現在の小泉外交も同じである。

第8章に出ている「日本の六大悲劇」の状態はあまり改善されていない。 それを書いておくと

  1. 官僚主導の政治と諸々の経済統制
  2. 政治家不在の政治
  3. マスコミ、特に大新聞の言論の自己規制と国際オンチ
  4. 国民大多数の高卒後の思考停止
  5. 企業社会の精神的麻痺
  6. 真の消費者運動の不在
である。これらの点は、あまり改善されていない。 私がとりあえず努力しないといけないことは、高卒後の思考停止を 阻止するように学生にはたらきかけることで、いろいろ個別には 努力しているが、まだ理想には遠い。