ウイルスに関係する現在から今後の社会的問題について書かれている。
未知のウイルスの出現に対する対策、異種移植によるエマージングウイルスの危険性、
バイオテロの危険性、病原体の管理の問題などである。
最終回の放送では、テキストで触れられていないことも放送されて、ウイルスが
病気をもたらすだけではないことがより強調されていた。テキストになくて、
放送で説明されていたことは以下の2点である。
- 自然宿主の中では、ウイルスはたいてい宿主と共存し、宿主に病気をもたらさない。
その例としては、オーストラリアで、野ウサギ退治のためにウサギ粘液腫ウイルスが
ばらまかれた結果が挙げられている。このウイルスは蚊の媒介によって急速に広がる。
ウイルスをばらまいた当初は確かに野ウサギは激減した。しかし、やがてウサギが
抵抗性を持ち始め、ウイルスが弱毒化して、次第にウサギとウイルスとが平和共存するようになった。
そこで野ウサギ殲滅作戦は失敗した。
- ヒトの中にいるヒト内在性レトロウイルスは、ヒトの胎児を守る役割をしている。
このレトロウイルスはヒトの遺伝子の中に住み込んでいる。胎児は、父親の遺伝子を
半分持っているので、母親にとって見ると異物である。にもかかわらず、母親からの
攻撃を受けないのは、リンパ球を通さない特殊な膜で守られているせいである。
この膜を構成するシンシチン syncytin をレトロウイルスが作っている。