これを読んで2つ腑に落ちたことがあった。
(1) 元外務官僚でテレビにもよく出てくる人はけっこうアメリカベッタリの 人が多い。たとえば、岡崎久彦はその典型で、アングロサクソンに従っていれば 何でも良いのだなどと宗教のようなことを宣っているのを聞いたことがある。 この本を読んで分かるのは、外務省の出世コースというのは、そういう単純な 考えの持ち主でなければたどることができないということである。 たとえば、外務省職員が読むべきであるといわれている冊子には以下のように 書かれているそうである。
米国は日本と共通の価値観を有する信頼できる唯一の国である。 そのような国に対して助けてくれないかもしれないなどと疑念を抱くこと自体、 誤りであり米国に対して失礼である。一方で、米国がやっていることといえば、たとえばある調査によれば、
米国海軍・海兵隊による海外の性犯罪件数は日本が圧倒的に多いにもかかわらずである。
(2) マスコミの外務省叩きのやりかたは何か方向がずれているような感じが していたのだが、たしかにずれていると書いてある。マスコミよりもこの本の方が 説得力がある。たとえば、
そもそも世間の間違った先入観に、「キャリアは悪、虐げられているノンキャリアは 気の毒だ」という思いがある。(中略)キャリアの中にできが悪い者が存在することは 事実である。しかし、ノンキャリアはそれ以上にできが悪い。という部分である。
外務省は、どんどん空洞化しているのだそうだ。たとえば、 他の省庁は独自に海外での情報収集能力を高めていて、 外務省を相手にしなくなってきている。下部組織からも主導権を 奪われている。外交も下手である。
なお、著者の最近の考え方は、 著者のホームページで知ることができる。 2006/02/01 付けの記事が興味深かった。本書では、憲法第9条改正を タブー視してはいけないという意味のことが書いてあるのに対し、 この 2006/02/01 の記事では、第9条改正を阻止しなければならないと している。一見変わったように見えるが、これは良く理解できる。 現在議論されている第9条改正があまりにも米国追従に基づいているからである。