遺伝子の川

Richard Dawkins 著、垂水雄二訳
原題:The River Out Of Eden
サイエンス・マスターズ1、草思社
刊行:1995/11/06
原著刊行:1994, BasicBooks 社
名古屋熱田の古本屋 BOOK OFF 熱田国道1号店で購入
読了日:2006/09/10

遺伝子と進化の考え方の一般向けの解説。とくに新しいことが書いてあるという ことでもないが、DNA を主役とする進化論をレトリック豊かに書いてある。

レトリック豊かというのは、逆に言えばかなり冗長な感じもする。そもそも、 進化論が正しいことを力説している部分があるくらいで、進化論を信じない人にも 信じてもらおうと説得する意図があるようだから、基本的なところで 長くなるのはある程度仕方がない。しかし、一般向けとしては、 図表や写真が全くないのがどうかと思う。図で表現してくれれば、 もっとわかりやすいのにと思った部分がいくつもあった。

興味深い考え方としては、最後の章の「自己複製爆弾」がある。 この章では、生命の指数関数的増殖(自己複製爆弾)に、 いくつかの重要なステップ(臨界点)があると説いている。

地球科学者としては、これらの地球惑星科学的な意味合いも考えたくなる ところである。

グールドの論敵らしく、カンブリア紀の大爆発を強調しすぎるのは 問題であるということがやんわり書いてある部分があるのがおもしろい (pp.22-25)。曰く、動物の基本的体制が数多く現れたことをさも大事件のように 語るのは誤りである。それは、進化における分岐の始まりのひとつに過ぎず、 最初はお互いの間の差異はごく小さいものだったはずだ、というわけである。 軟体動物と甲殻類のようにお互い大きく異なる分類群も、分岐が始まったときは、 同じ種の地理的に隔離された個体群どうしに過ぎなかった。