Deffeyes "Hubbert's Peak -- The Impending World Oil Shortage" のサマリー

last update : 2006/01/12

サマリー

Chapter 1 Overview

世界の石油生産のピークが 10 年以内に迫っている可能性が高い。

Chapter 2 The Origin of Oil

石油の源岩 (source rock) は少数の薄っぺらい堆積層である。中東の大油田でさえ、 源岩は厚くて 100 feet (30 m) である。要するに、有機物の割合が多い層など そうたくさんはないのである。

原油を構成する分子のうち最も簡単なものは、paraffins (normal alkanes) で、 直鎖の炭化水素である。生物が作る炭化水素には炭素数が奇数のものが多いが、 原油の炭化水素の炭素数は偶数のものと奇数のものが同程度ある。それは、 炭素鎖が熱でランダムに千切れているからである。石油が生成する温度は 180-295F (82-145℃) くらいで、それより高温ではメタンにまで分解して天然ガスになる。深さにすると 7500-15000 feet (2300-4600 m) くらいであり、これを "oil window" と呼ぶ。 それより浅いところで見つかる石油は、移動してきたのか、地殻変動や浸食で浅くなったのである。

石油の元になる有機物が堆積するのは、酸欠状態の海のはずだが、現在そういう場所は なかなかない。しかし、東地中海の sapropels と呼ばれる堆積物は非常に有機物が豊富で、 地質学的には最近、何度か堆積をした。海流の変化で栄養塩が溜まる状況になって、 生物生産が異常に高くなったときに堆積したというのがひとつの仮説である (Demaison and Moore, Organic Geochemistry 2 9-31: 1980)。 こういうものが石油の原料の候補である。東地中海の海流の変化は、 気候変動や河川の経路の変化などで簡単に起こりうる。

石油を含む岩石の温度履歴を知る方法には以下のような方法がある:(1) vitrinite と呼ばれる石炭片の反射特性から (2) 含まれる花粉の変質度合いから (3) 含まれる コノドント化石の変色の具合から。

まだ良くわかっていない点も多い

  1. 石油の生成年代は本当はよくわからない。原岩の年代でも貯留岩の年代でもない。 "oil window" にいつ入っていたかは、岩の堆積年代とは別物である。
  2. 上と関連して、岩石の深度変化の歴史がよくわからない。大陸というものは 一方的に大きく隆起沈降するものではない。大陸は常に冷却していくのでもなく、 ときどき hotspot の上を通ったりして温まることもある。 結果的に、石油の原岩は "oil window" に入ったり出たりする。
  3. 実験室の結果を、時間スケールが大きく異なる現実にどう応用するか? 実験室で得られた活性化エネルギーを用いると、oil window が薄くなりすぎる。 活性化エネルギーの違うまったく別の反応が起こっているのではないだろうか。

石油には naphthene 類(環状 alkane)が多く含まれている。直鎖 alkane は 2つに分裂すると、一方は水素が1つ足りなくなるから環になるのだろう。 数字の9の字になって分裂し、一方が naphthene、一方が alkane になることが 考えられる。naphthene の分裂反応としては、長い環状鎖が8の字になって 2つの環になる反応があるだろう。また、石油には、藻類が作るより長い鎖の alkane が含まれているが、それは直鎖が2つ交差してつなぎ変える反応で作られうる。

Chapter 3 Oil Reservoirs and Oil Traps

石油貯留層となる構造には以下のようなものがある。
(1) 構造(性)トラップ (structural trap)
地質構造にトラップされているもの。以下のような種類がある
(1a) 背斜構造 (anticline)
代表的な貯留層の構造。古くから知られており、昔は石油の探査といえば背斜構造を見つけることだった。
(1b) 傾斜不整合 (angular unconformity)
傾斜不整合で下位の地層が上位の地層に切られたところに溜まる。 1930 年に発見された East Texas oil field が代表的。
(1c) 断層 (fault trap)
断層は、地層を切ることで石油のトラップになる場合と、石油やガスが漏れる通路になる場合とがある。
(1d) 岩塩ドーム (salt dome)
(2) 隕石衝突痕
たとえば、North Dakota, Oklahoma
(3) 層序トラップ (stratigraphic trap)
地層の端の部分にトラップされるもの。見つけづらいので、今後発見されるものはこういうものになってゆくだろう。
(3a) 礁 (reef)
Mexico の the Golden Lane のものが有名。
(3b) 砂の構造に関係するもの
いくつかある。ひとつは、細長い構造で「靴ひも状砂トラップ (shoestring sands)」と呼ばれる。 これは「沿岸(砂)洲 (offshore bars)」が元になっているのかもしれない。もうひとつは 「固定砂洲 or 蛇行砂洲 (point bars)」で、川が蛇行しているとき屈曲部の内側に溜まる砂である。

石油を溜める岩の重要な性質が Darcy 則に関係して二つある

石油の貯留岩は、砂岩 (sandstones) か炭酸塩岩 (carbonates) が大部分である。以下のような種類がある。

cap rock も油田に必要なものである。 [注意:貯留岩の直上に cap rock があると思ってしまう人が多いが、 通常 commercial 貯留岩の直上にあるのは non-commercial 貯留岩である。つまり、生産速度が遅くて 使い物にならない貯留岩である。] cap rock にも、いくつかの種類がある。
pore が小さくて cap rock になるもの (e.g. 泥岩)
油層が薄いうちは、oil-water 表面張力が油の浮力に勝って cap rock になる。大量の石油があると漏れてしまう。
pore がほとんどないもの
代表的なのは anhydrite と rock salt で、いずれも蒸発岩である。中東の大油田の cap rock はこれ。 anhydrite は沈殿するときは gypsum で、埋没するにしたがって水を失い anhydrite になる。 こういった鉱物は比較的柔らかいので、高圧下で pore がつぶれてしまう。

源岩、oil windows、oil traps、貯留岩、cap rock といったことがらを良く理解していても、 実際に油田を発見するのは難しい。cap rock が実際は leaky であったりなんていうことが失敗の原因になる。

Chapter 4 Finding It

石油探査の手法を解説する。地表の地質調査は世界中だいたい終わっているので、あとは
  1. 地下の掘削データに基づく地質学的調査
  2. 地球物理探査
の2つが主要なものである。

4-1 地下掘削探査

掘削によるものとしては、(a) 掘削コアの調査(例:有孔虫層序)と (b) 孔内測定とがある。 以下では孔内測定について詳しく述べる。

孔内測定では、Schlumberger 社が昔から電位や比抵抗の測定を行っている。現在では Schlumberger 社はあらゆる探査を行うようになった。石油は比抵抗が大きいということが探査のポイントである。

比抵抗測定に関しては、1947 年に Archie が画期的な定量的な推定法を発明した。それは以下の2つの 法則に基づく。

Archie の第1法則
塩水を含んだ岩石の比抵抗の porosity Φ依存性は Rr/Rw = 1 / Φ2 で与えられる。ここで Rr が塩水に飽和した岩石の比抵抗、Rw は塩水の比抵抗である。
Archie の第2法則
塩水で飽和した石の比抵抗と、石油が入った石の比抵抗 Rt には Rt/Rw = 1 / Sw2 の関係がある。 ただし、Sw は pore space のうちの塩水の割合である。

4-2 地球物理探査

地球物理探査には (a) 重力と (b) 地震波がある。重力の方は、直接的には salt dome に対してくらいしか 有用ではないので、以下では地震波探査について詳しく述べる。

1930 年ころから反射法の探査が始まり、これは現在でも主力の方法である。1950 年代以前は、震源は専ら ダイナマイトだったが、1950 年代くらいから Vibroseis が使われるようになった。

以下に、ブレークスルーとなった重要な技法や概念のいくつかを紹介する。

Chapter 5 Drilling Methods

掘削装置の歴史 : rotary drill rig では、泥水の圧力が重要である。泥水の圧力を周囲より少しだけ高くしておくと、 周りから地下水が浸入しないし、逆に泥水も周囲に出てゆかない。そのためには、 泥水の密度を水の密度よりも少し高くしておけば良い。

ところが、ある深さ(たとえば 8000 feet = 2400 m)より深いと、周囲の水の圧力が hydrostatic から ずれて高くなってゆく。石油業界では、水が hydrostatic な状態を normal pressure と呼び、 圧力がそれより高くなると overpressure と呼ぶ。そのため、圧力が高くなってきたときは、 上の低圧 (hydrostatic) 部には casing をするなどの処理がなされなければならないる。 overpressure は、間隙圧が高まるという言い方をしてもよく、断層が滑りやすくなる原因にもなる。

(有効圧力)=(全圧力)−(水の圧力)

overpressure の原因として著者は次のようなものを考えている (Deffeyes, European Union of Geosciences, XI, p.247)。それは、含水鉱物が化学平衡で脱水することである。含水鉱物は圧力を上げるか、 温度を上げると脱水する。この場合の圧力は有効圧力である。温度が上がると、脱水が始まり、 水が逃げていかなければ、水が overpressure になり有効圧力が減る。これが脱水が完了するまで続く。
(吉田注) overpressure は単純に考えると、圧力が岩石の強度を超えてくるために 水の圧力が hydrostatic から lithostatic に移り変わる過程のはず。上のように水を関与させないといけない理由が 不明。また、岩石と水との反応に関係する圧力が本当に有効圧力なのかも疑問が残る。それから、 圧力が上がると脱水が進むというのが、どのくらい一般的な性質なのかもわからない。

ふたたび、掘削装置の歴史に戻る(20 世紀)。

石油やガスが漏れて環境汚染や事故につながることを防ぐには、きちんと surface casing をしておく ことが重要である。天然ガスは有毒の硫化水素を含んでいる場合がある。これは硫黄に変えないといけない。 また、そのようなガス田がガスを噴出して制御不能になった場合は、一刻も早く燃やしてしまわないといけない。 油田やガス田の火災も怖ろしい。

掘削にはかなりの額の金が必要なので、節目節目の決断が難しいこともある。

掘削が終わると、casing をして周囲をセメントで固定する。孔をいくつか掘ったら 水圧破砕でそれらの間をつなげる(1960 年ころに開発された技術)。 水圧破砕法以前は爆破が使われていた。

生産が始まった後、自噴が停止すると、ポンプで石油を汲み上げることになる。 ポンプでは 10 m 程度以上は水を持ち上げられないから、ポンプは坑井内に下ろして使うことになる。 油田でギッコンバッタンしているのは、このポンプを駆動する "sucker rod" である。

石油の回収率を上げるには以下のような方法がある (secondary recovery)

さらに、回収率を高めるのに以下のような方法がある (teritiary recovery, enhanced recovery)

最近の技術改良には以下のようなものがある

Chapter 6 Size and Discoverability of Oil Fields

この章では、油田の大きさと見つかりやすさの関係についていろいろ考察している。
(吉田注) この章の前半の大部分はあまり根拠のない経験則を議論しているだけなのでそれほど重要ではなさそう。

Bloomfield et al (1979) report to the Department of Energy によると
Kansas の油田の場合

(油田の発見確率)∝(油田の大きさ)0.66
となっている。単純に地図にランダムに印を付けたところを掘ってみるだけなら、指数は2になるだろう (面積に比例)。石油の掘削は見つかりやすそうなところを探しているが、その見つかりやすさは必ずしも 面積に比例しないのであろう。

現存する石油の半分は 2 billion barrels 以上の大油田に依るものである。世界最大の油田は Saudi Arabia の Ghawar (87 billion barrels) で、1948 年に発見された。

中東の国々でいつごろ石油が発見されたか?

北海油田は、第2時世界対戦後 Shell の技術者が Groningen ガス田を発見したことに始まる。 1969 年に北海最初の生産油田である Ekofisk 油田が、ノルウェーとイギリスの間に発見された。

Chapter 7 Hubbert Revisited

Marion King Hubbert の予言を振り返る。

[余談] USGS の石油に関する見積もりはいつも甘い(大きめ)。

Hubbert は 1956 年に、アメリカの石油生産のピークが 1965 年 or 1972 年に来ると予言した。 それは実際 1970 年に来た。

石油生産量カーブは bell-shape で fit した。左右対称になる必然性は何もないのだが、とりあえず 左右対称だとしよう。モデル曲線の候補としては、Gaussian, logistic, Lorentzian などがある。 Hubbert は logistic 曲線を使ったのだが、アメリカの原油生産量の例だと Gaussian が一番良く fit する。 そこで、以下では Gaussian を用いて議論する。

Hubbert が将来予測につかった方法のひとつは次のことに依っている。彼は "cumulative discovery" という量をそれまでの積算生産量とその時点での推定埋蔵量の和と定義した。これと cumulative production (Gaussian を積分した誤差関数型曲線になる)とを比べると、曲線の形は同じで時間にシフトがある ことが経験的にわかった。cumulative discovery が時間的に前に来るので、 これを cumulative production の予測として使えそうだということになる。

さて、以上の準備の下に世界の石油生産量の将来予測をしよう。

もちろん石油統計の不確定さは大きいから数字はそれほど信用できない。しかし、 だいたいは正しいであろう。

Chapter 8 Rate Plots

Q を積算生産量とする。もし生産量が logistic curve に従うなら
(1/Q) (dQ/dt) = A (1 - Q/Q0)
という関係がある。すなわち、Q を横軸に、左辺の量を縦軸にプロットすると直線的な減少になる はずである。Q は Hubbert の意味での cumulative discovery と考えても良い。積算生産量と cumulative disovery を同じグラフ上に書くともっと良い。両者が同じ線の上に乗れば、両者を 時間を横軸にして書くと、時間方向にシフトした同じグラフになるはずである。

logistic でなくて Gaussian だと (1/Q) (dQ/dt) vs Q の線は直線ではなくなるが、それでも 大部分の期間では直線に近くなる。

実際に (1/Q) (dQ/dt) vs Q のグラフを書いてみる。

Chapter 9 The Future of Fossil Fuels

石油生産が間もなく下降線をたどることは避けがたい。とすれば、何をなすべきか?

まず、個人、あるいは個々の企業のレベルで考えてみよう。 石油会社の株を買うなんていうのは大金持ちにしかできない選択だ。それに、石油会社に 投資できたところで、石油の高騰の影響を無くすることはできない。メジャーの影響力も そんなに強いわけではない。

石油関連企業にとっても難しい世の中になってきた。油田の開発は 20 年といったスパンで 考えないといけないのに、経済は非常に短期的な利益を求めるようになってきた。 とくにインフレだったりすると、将来のことを考えるのが経済的には無意味になってくる。 企業が短期的視点しか持っていないとすれば、将来のエネルギーの見通しは悲劇的である。

将来的には、石油は石油化学製品の材料専用になってゆくであろう。燃料として燃やしてしまうなど もったいない。石油精製産業は、歴史的にはまず原油のいろいろな成分を分離して精製することから 始まった。ガソリンも蒸留で作られた。そのうち、大きな分子を熱分解することが行われるようになった。 そこから石油化学産業が発展してきた。石油化学製品は、第二次大戦後爆発的に発展し、今や生活の一部である。 気が付きにくいところでは、窒素化合物の原料は間接的には石油だから(窒素化合物はアンモニアから合成する。 アンモニアは水素ガスと窒素ガスから作る。水素ガスの原料は石油である)、窒素肥料も石油化学製品である。

供給を増やすための方法にはどういうものがあるだろうか?まず回収率を上げることがある。 primary recovery, secondary recovery では回収率は 50% くらいである。さらに tertiary recovery (enhanced recovery) を使うことが考えられる。1998 年のアメリカにおける 実績は以下の通り。

unconventional sources の利用も考えられる。タールサンドが最近注目されている。タールサンドは 死んだ油田である。侵食によって油田が地表に出てくると、小さな分子が蒸発して固体のタールが残る。 とくに Alberta には、Athabaska と Cold Lake という巨大な産地がある。ただし、タールサンドは、 硫黄を多く含むという意味であまり質の良い石油ではない。

oil shale というのもある。oil shale は oil も shale も含んでいない。oil window に まだ入っていない石油源岩である。ただ、石油を取り出した後に残ったものの体積が元より 増えるという問題があって、処理に困るのでなかなか使われない。 Utah, Colorado, Wyoming にまたがる大きな産地がある(Green RIver Formation)。 この Green River Formation の元は酸欠の湖底堆積物である。 酸欠で bioturbation が無いので、堆積時の細かい縞が残っている。 Utah では部分的には油田になっている。

天然ガスも使える。天然ガスは、ふつう、その歴史の中で oil window よりも深いところに埋まって しまったことのあるところで産出する。天然ガスは他の化石燃料に比べてクリーンである。 硫黄分を分離するのが容易だし、同じ熱量に対して二酸化炭素の放出も少ない。 欠点は、気体なので体積が大きいことで、そのため車などのの燃料としては使いにくい ということがある。とはいえ、今のところガソリンより安いので、高圧でタンクに封入すれば、 あまり長距離走らない車であれば経済的だろう。さらに、天然ガスはオクタン価が高いので、 天然ガス車は圧縮比が高くて効率の良いものが作れる。天然ガス田の大きいものは西シベリアにあり、 西シベリアの天然ガス貯蔵量は世界の3分の1を締める。

石炭は燃料としての質が良くない。硫黄や水銀を取り除くことが難しく、燃やすと大気中に排出される。 しかし量は十分にある。アメリカと旧ソ連に多い。

ともかく、化石燃料問題は石を見なければ始まらない。経済ばかり議論していても仕方がない。

Chapter 10 Alternative Energy Sources

いずれ、原油依存体質からは脱却しなければならない。他にエネルギー源は何があるか?

地熱が一つの候補である。高温の蒸気でタービンを回して発電する。ただ、溶けていた鉱物が 析出して管が詰まるという欠点がある。しかし、水を気化させず、熱水で有機液体を気化させて タービンを回すという binary geothermal plants が 1980 年代に実用化され、問題が改善された。 熱水は地下に戻すので環境を汚染しない。石油の技術を転用している部分も多いので、石油会社が 運営していることも多い。

原子力も考えておこう。原発事故に対する危惧から最近では人気が無い。原子炉のデザインには いろいろな可能性がある。最も普及しているのは、原子力潜水艦が元になっているアメリカ標準の軽水炉である。 原子炉から出てきた使用済ウランは、単に捨てるか、再処理で未使用のウランやプルトニウムを回収するかする。 しかし、プルトニウムは危険なので、再処理の是非が問題になっている。とはいえ、安全の問題と 廃棄物の問題は、社会が十分な投資をすれば解決可能かもしれない。

電気を貯蔵するのは難しい。そのため、電気は使うときに作られなければならない。 時期によって需要が違うので、通常、原子力発電所でベースの部分を作り、 火力・水力で増加分を担当している。

水力は魅力的な点も多い。renewable で、大気汚染をしないし、必要なときに運転できる。 しかし、脱ダムが考えられている御時世でもあり、発電できる総量には限りがある。

太陽光や風力は、現在発展中。だが、すぐに解決策にはならない。エネルギー密度が低いので、 大きなエネルギー採集器が必要になる。太陽光の利用法は、熱を使うか、太陽電池を使うかである。 ただ、太陽電池の製造にはエネルギーがたくさん要ることに注意すべきである。

他にもいろいろ候補はあるが、どれが本当に使えるのか慎重に検討する必要がある。

Chapter 11 A New Outlook

将来の石油不足を考えるとき、過去の石油危機の教訓は何か? (1) 一つの方法だけで問題を解決しようと思うな。いろいろな方法を組み合わせることが重要である。 (2) しかし、いろいろな方法があるからといって、危機が来ないと安心するわけにはいかない。 ともかく、ちゃんとした準備をすることが肝要である。

システム全体を見ることも重要である。たとえば、燃料を燃やして暖房にするにしても、 単に暖房に使うのは「効率」は良いけど、ちょっともったいない。 発電(電気という質の高いエネルギーを作る)に使ってから、 余りを暖房(熱という質の低いエネルギーを作る)に使うというコジェネレーションの方が有用だろう。

意識をすることが大切。


専門用語辞典

この本で解説されている専門用語の glossary
cat cracker (p.18)
cat は catalytic の略で、触媒と熱で石油を低分子化する石油精製所の施設。
paraffin (p.18-20)
alkane 炭化水素 (CnH2n+2) のこと。 直鎖 (normal alkane) のものだけを指す場合と側鎖があるものを含む場合とがある。 ( Cf. TheFreeDictionary.com )
gas condensate, natural gas liquids, drip gas, "white gold" (p.18)
炭素数 3 から 5 の炭化水素で、oil と gas の中間くらいのもの。
odd-even predominance (p.20)
生物が作る炭化水素には、炭素数が奇数のものが偶数のものに比べて多いこと。
sill (p.23)
海閾《相接する2つの海盆を分ける隆起部分中の低所》 (ジーニアス大)
本文を見ると「相接する2つの海盆を分ける浅い場所のことを言う」とするべきで、 上記英和辞書の「低所」は不要。doorsill(敷居)のイメージから来ている。 ただし、sill depth はそのうちで最も深い場所の深さのことらしいから、 上記英和辞書もそう間違いではない。
A submarine ridge or rise at a relatively shallow depth, separating a basin from another basin or from an adjacent sea and causing the basin to be partly closed (Meridian Gold Glossary)
stratigraphic test (strat test) (p.39)
層序試錘。地下の地質調査の手段として、深部までの層序を明らかにするために実施する 深い深度の試錘。( 石油・天然ガス用語辞典
angular unconformity (p.45)
傾斜不整合。不整合面をはさんで上下の地層が斜交するもの (SPED TERRA)。
James Hutton がすでに 18 世紀末に記述している。下位の堆積層が造山運動で傾いて、 上部が削り取られた後に、上位の若い堆積層に覆われたもの。
spring pole drilling rig (p.88)
人力の掘削機。硬い木の棒を人力で撓ませて、その反発力を用いるものらしい。 (図や写真が Petrolia Discovory -- Virtual TourThe Oil Museum of Canada などにある)
cable tool rig (p.88)
19 世紀に使われた掘削機。孔に下ろすものはすべて cable が付けられていたので、この名がある。 図と解説が OTS Heavy Oil Science Center : Cable Tool Rig にある。
sucker rod pump (p.104)
陸上での石油汲み上げに使うポンプ。詳しい図と解説が How a Sucker Rod Pump (Oil Well Pump) Works にある。