著者の人体に対する評価は、
ヒト科全体を批判するのがためらわれるとしても、明らかにホモ・サピエンスは 成功したとは思われない。この二足歩行の動物は、どちらかといえば、 化け物の類いだ。五〇キロの身体に二四〇〇ccの脳をつなげてしまった 哀しいモンスターなのである。だそうだ。題名からしてこういう結論になるんじゃないかとは半分予想はしていた。 ここまで書けば潔いものである。
本題もさることながら、とくに著者の熱意を感じるのは、最終章で近年の 拝金主義を批判して、文化、そして博物館や動物園の重要性と役割を力説している 部分である。私はこういう論調は結構好きである。博物館や動物園は単なる 見せ物ではないと言われれば、その通りだと言いたくなる。とはいえ、 冷静に考えてみると、これだけだと、近年の効率や金を重視する人には、 いくら熱意を持って語っても空回りするだけなんじゃないかという気もする。 文化の重要性を語ったところで、役に立たない文化など意味がないと考える人に とっては無駄口に過ぎない。本当はそういう意味では文化の人類史的意義なんかに ついて語らないといけないと思うのだが、著者はそこまでは語っていない。