他人を見下す若者たち

速水敏彦著
講談社現代新書 1827、講談社
刊行:2006/02/20
名大生協で購入
読了日:2006/05/07

いわゆる今時の若者はどこが違うのか?を「仮想的有能感」を概念を案出して それを軸に見てゆこうとしている本。そんなに難しい概念を書いているわけでは なかったので、パソコンのデータのバックアップをしたりしながら読んでいたら 1日で読めてしまった(連休だったおかげだけど)。

仮想的有能感とは、比較的不特定な他人を軽蔑することで、自分の心を守る 心の働きである。多くの場合、無意識に行われる。著者は、これが若者が キレたりやる気がなかったりすることを考察する上での鍵にな概念になると 見ている。

ところが、実際に調査してみると、仮想的有能感は、若者と年寄で高いこと に気付く。著者は、そこで、若者を特徴づけるために、もう一つの軸として 「自尊感情」を導入する。自尊感情は、自己に対する積極的な評価で、 「自分はこれで良い」と感じることである。調査によれば、仮想的有能感と 自尊感情は、似ているように見えて、実は独立性が高い。そこで、4つの 類型が考えられる。

仮想的有能感(他者軽視)が低い仮想的有能感(他者軽視)が高い
自尊感情が高い自尊型全能型
自尊感情が低い萎縮型仮想型

若者に多いのは、仮想型と萎縮型で、自尊感情が低いことが特徴である。 年寄に多いのは、全能型である。 仮想型が、いわゆる社会的に問題になる若者の典型的類型である。 一方で、萎縮型は、鬱や引き籠りといった問題を引き起こす。 私の見るところでも、キレやすい年寄もけっこう多いので、仮想的有能感は 若者だけの問題ではない部分もあるのかなあと思う。そこのところは この本ではあまり追求されていない。

このような類型があらわれるのが、単に世代の違いなのか、 時代の変化なのかはまだわかっていないらしいが、 著者は、時代の変化だろうと思っている。 とはいえ、私も子供の頃はけっこう萎縮型に近かったように思うので、 年齢を重ねると変わって行く部分もかなりあると思う。