石デ読ム宮沢賢治

石の博物館編
銀座屋出版社
刊行:1999/05/20
富士宮市の奇石博物館で購入
読了日:2006/03/08
富士宮市の奇石博物館訪問記念。 奇石博物館なんて、鉱物マニアが自分のコレクションをちょっと見せている だけかと思っていたら、けっこうおもしろいところがいろいろあって感心した。 そのひとつが、宮沢賢治の作品のなかで鉱物を扱っている部分を抜き出して、 実際の石と対比しながら展示してある部分だった。 このブックレットはその解説である。

宮沢賢治が地学に通じているのは「グスコーブドリの伝記」である程度 知られているところではあるが、その他にもいろんな作品で登場していて さらには地学を題材とした「楢の木大学士の野宿」なんていう物語を 書いているとは全く知らなかった。宮沢賢治というと小中学校で読まされるけど、 それ以来読んだことがなかったから、こんな地学専門家が内輪ウケできるような ネタを書いているとは知らなかった。このブックレットでは、解説付きで そういう物語の抄録が載せてある。

以下のことが解説なしで何を言っているか見当が付けば、それはかなり 岩石鉱物学の知識がある人である。

「バイオタさんがひどくおなかが痛がってます。どうか早く診て下さい。」
(中略)
「はぁい、いまだんだんそっちを向きますから。ようっと。はい、これは、なるほど。 ふふん。一寸脈をお見せ。はい、こんどはお舌、ははあ、よろしい。そして 第十八へきかい予備面が痛いと。なるほど、ふんふん、いやわかりました。 どうもこの病気は恐いですよ。それにお前さんのからだは大地の底に居たときから 慢性りょくでい病にかかって大分軟化してますからね、どうも恢復の見込がありません。」