私のような素人向けのハウツー本として、実にコンパクトに 要領よくしかも読みやすく書けていて、すぐに読めてしまった。 著者は、他にも本を書いたりしているみたいだし、写真雑誌の編集を やっていたこともあるみたいなので書くのに慣れているのであろう。 web 上にも著者による カメラ遊遊塾 という写真撮影講座がある。
単にうまく見える撮り方を書いているだけでなく、その背景にある考え方を 率直に書いてあるところが良い。たとえば、写真は真実を写さないということが 書いてあって
写真に真実が写るとすれば、それは被写体の真実ではなくて、 写真を利用する人の心模様を写し出す鏡としての真実なのです。(pp.30-31)という気の利いた文句がある。あるいは、 芸術写真に普遍的な価値はないということが書いてあって、 芸術性を競うコンテストに関しては、
この場合に重要なのは、選者が誰かということに尽きます。(p.154)なんて身も蓋もないことが書いてある。
ハウツーな部分も要領良くまとめてある。操作のポイントは以下の5点に まとめてある。すなわち (1) 露出補正を行う (2) ストロボを使わない (3) プロポーションが大事な写真は望遠側で撮る (4) ピントをしっかり合わせる (シャッター半押し、マクロ) (5) ホワイトバランスで色調整をする、 の5つである。うまく撮るポイントも5つにまとめてある。すなわち、 (1) 上記の操作ポイントを駆使する (2) 複数枚撮っていろいろな可能性をおさえておく (3) 写したいものを大きく写す (4) 背景に注意する (5) 光を意識する、 の5つである。その後、写す対象の種類ごとに注意点を説明してある。
上記の色調整に関しては、写真が真実を写さない理由の一つとして
カメラは、実物の色を忠実に写すのではなく、実物よりもキレイに見える色に 写すように作られています。(p.95)と書いてあるのが勉強になった。
以上のような感じで、あんまり深入りしたり多岐にわたりすぎたりすることなく、 考え方からテクニックまで説明してあって、初心者向けとしては良くできた本だ。