”日本離れ”できない韓国
黒田勝弘著
文春新書 516、文藝春秋
刊行:2006/07/20
名大生協で購入
読了日:2006/08/08
韓国旅行をしようと思って韓国にに関心がでてきたので、読んでみた。
著者は、産経新聞ソウル支局長。で、予想される通り、いわば「嫌韓」の書。
とはいえ、著者はソウルに長く住んでいることからわかるように、
「韓国が嫌い」なわけではない。「あとがき」を読むと分かる通り、
新聞やテレビを見なければ韓国は面白くて飽きない国だ、と思っているのである。
マスコミや政治家などの「反日」に嫌な思いをしているわけで、
その嫌な部分を書いたのが本書というわけである。
以下、各パートのサマリー。
各パートのサマリー
「植民地の終わり方」の失敗―韓国が靖国問題にこだわる事情
韓国が過去の植民地問題にこだわる原因は、植民地支配からの解放が、
自分で勝ち取ったものではなく連合国によるものであったことにある。
韓国からすれば、自力解放ではなかった鬱憤がたまっている。
韓国の歴史教科書では、そのために抗日闘争が殊更に強調される。
したがって、対日協力の歴史は消去せねばならず、靖国も否定しなければならない。
一方で、日本側も、韓国との戦いで敗北したわけではないので、
「日本はいいこともしたはずだ」という声がしばしば出ることになる。
A級戦犯問題も、本来韓国とは関係がない。A級戦犯は戦争行為を断罪したもので、
植民地支配を断罪したものではないからである。
なお、韓国の一般の人々はそれほど靖国に関心があるわけではない。
独島シンドローム―これだけは手放せない韓国人の”元気の素”
独島は、韓国人にとっては日本に闘志を燃やすための「元気の素」である。
[吉田感想:竹島(独島)問題で韓国が大騒ぎになるのは理窟から言えばおかしい。
事実上占領しているのだから、ロシアのように「韓日の間に領土問題など
存在しない」などとうそぶいていた方が断然得のはずである。騒ぐことは、
領土問題が存在すると言っているようなものだ。その謎が少し解けた感じがした。]
日本統治の過去処理をめぐって―日韓・ヨーロッパ比較論の盲点
日本統治の過去処理をめぐって、日本とドイツを比較し、日本はダメだという
主張がある。しかし、これは誤りである。日本は韓国に対する補償を、
個人補償ではなく国家補償という形で行った。その結果、個人補償は
韓国政府の責任となった。これに対し、ドイツは国家補償ではなく、
個人補償を行った。その違いがあるだけである。
さらに最近、韓国では、自国をフランスになぞらえる議論が流行である。
しかし、そもそもフランスはドイツの植民地ではなかったし、その他にも
このたとえにはいろいろ無理がある。
南北格差はなぜ開いたか―「日本」を捨てた北朝鮮と活用した韓国
南北朝鮮は民俗も文化も基本的には同じである。にもかかわらず、なぜ
こんなにも差が開いてしまったのか?社会主義と資本主義の差と言って
しまえばそれまでだが、日本との関係の違いも大きな原因であると考える。
日韓国交正常化のときの日本からの経済協力支援(植民地時代の補償金)が
大きい。これに対し、北朝鮮と日本の間にはまだ国交がない。
韓国で「親日派」というのは、日本統治時代に日本に協力した人たちのことで
悪の代名詞となっている。朴正煕は元日本軍将校だったので、
親日派ということになる。
金日成と朴正煕の内なる日本―二人の満州体験が南北のその後を決めた
金日成は抗日パルチザンで、その栄光によって政権を担った。
解放後も日本を拒否し続け、国家発展に失敗した。
朴正煕は元日本軍将校で、解放後も日本との協力関係を築き、
国家を成功に導いた。
なぜ日本で拉致事件が起きたのか―金大中拉致と日本人拉致のナゾ
対朝鮮贖罪意識と社会主義幻想によって、日本には長い間北朝鮮タブーがあった。
このため日本人拉致問題が長い間マスコミから放置された。
金大中拉致事件では、韓国は日本のマスコミや国際社会から非難された。
日本政府は、政治決着を図ったので、処理がうやむやになった。
いずれの拉致事件も、国境がないがしろにされているという意味では、
「植民地支配のツケ」であるとも言える。植民地であったため、
朝鮮(韓国)人の国境意識が弱いのではないか。
誰も知らなかった「日本隠し」―日韓国交正常化四十周年で明らかになったこと
韓国の近代化や経済発展に対する日本の貢献は大きかったにもかかわらず、
韓国はそれを認めようとしていない。反日感情のせいである。
たとえば、国交正常化の際の経済援助は韓国の経済発展の出発点である。
浦項製鉄所はその代表例である。しかし、それは韓国ではほとんど知られていない。
民間でも、現代自動車、起亜自動車、インスタントラーメンの発展は、
日本からの技術協力による。ヤクルトおばさんによって、パートタイマーの
社会的評価が向上した。ロッテによって顧客中心の商法が根付いた。
光復六十周年の風景―2005年は反日三点セットで「反日と嫌韓の年」
2005 年、廬武鉉政権は反日キャンペーンを展開した。韓国が日本の教科書に
文句をつけるのはおかしい。教科書が自国中心になるのは当然ではないのか?
[吉田感想:教科書が自国中心になるのはまあ普通であるにしても、
日本は普通の国の上を行って、インターナショナルなセンスの教科書を使うと
良いと思う。「みんながそうしているから」という論理は、いつも気持が悪い。]
「歴史清算」は日本まかせ?―再評価される閔妃と忘れられる李王家
朝鮮において李王朝は 500 年続いたにもかかわらず、その末裔に対して
韓国は冷淡だった。そもそも、日本支配から解放されたとき、韓国が
李王家の下で立憲君主制になる可能性もあったにもかかわらず、そういう
動きは全くなかった。日本支配下で傀儡化していた意味はあるにせよ、
李王家とて日本支配の被害者ではなかったか?
一方、韓国では最近、閔妃(韓国では明成皇后)がブームである。
日本人によって暗殺されたせいで、悲劇の王妃ということになっている。
韓流ブーム断想―日本にとって朝鮮半島はどんな価値があるのか
韓流ブームの源流として、朝鮮通信史、茶碗ブーム、漢字文化を挙げたい。
アジアには深入りするな。