ブロークバック・マウンテン

Annie Proulx 著、米塚真治訳
原題:Brokeback Mountain
集英社文庫 フ 21 2、集英社
刊行:2006/02/22
原著刊行:1997/10/13 雑誌 New Yorker 掲載, 1999 短編集 Close Range: Wyoming Stories に収録
名古屋栄の紀伊国屋書店ロフト名古屋店で購入
読了日:2006/04/29

映画が評判になったので、映画を見て、そしてその記念に本を読んだ。 同性愛の悲劇の物語である。しかし、正直なところ、どうして こんなにも評判が高いのか、映画にしろこの小説にしろ今ひとつ良く分からない。 もちろん、そこそこの感動は得られるが、それほどのものかなあという 感じもする。

映画と小説とでは、焦点が少し違う。映画において強調されるのは、 主人公の二人が元々同性愛者ではないが成り行きで恋に落ちたという点 とアメリカの山の自然の美しさである。そのことで、美しい友情と 雑然とした日常が対照的に提示される。小説では、恋する二人は 風采の上がらない田舎者だし、少なくとも Jack はもともと同性愛者である ことが示唆されている。そこで、保守的な田舎の同性愛者の抑圧という面が より強調されることになる。

私がこの物語にあまりピンと来なかった理由は2つほど考えられる。 一つは英語の問題である。映画の方は英語のセリフがあまり聞き取れなかった。 たぶん田舎の貧しい人の英語なのだろう。小説の方も、「訳者あとがき」に よると、文体は、地方の俗語も取り入れたかなり独特のものらしい。 そういうところは、私にはとても味わえない。二つ目は、ワイオミングという 土地柄じゃないかと思う。アメリカ中西部と言えば、非常に保守的な ところである。そういうことは、頭ではわかっていても、日本から見ていると よく見えないところで、それが背景にあることが本来この物語を 印象深くしているはずなのではなかろうか。