特集 論点 日本宗教秘史

歴史読本 2006 年 3 月号 (第 51 巻 5 号)
新人物往来社
刊行:2006/03/01 (発売日は 2006/01/24)
豊橋の精文館書店豊橋汐田橋店で購入
読了日:2006/02/11

日本の宗教は、単に仏教と神道などと言われることが多いが、 仏教や神道にもいろいろな流派があると同時に、かつては神仏習合が 一般的だった。それが、明治政府の神仏分離政策で大打撃を受けて、 とくに神道に関しては現在では過去の痕跡がわれわれ一般人には よくわからなくなってしまっている。仏教の歴史ならば、ある程度は 日本史の教科書に書いてあるけれど、神道の歴史は無いようなものである。

この特集ではそういうところも含め、日本の宗教の歴史のいくつかの場面・側面が 扱われていて、日本の宗教の多様性の一端を垣間見ることができて面白い。 宗教は、為政者の弾圧、後継者争い、教説の対立、大衆への迎合などで、 分派やら集合やらを繰り返して実にダイナミックに動いている。 明治政府の政策は、その弾圧の一つともみられるが、宗教文化に 取り返しの付かない喪失をもたらしたという意味では特筆されるように思う。

本特集は、いくつかの小特集にわかれている。「特集事典 日本神道流派・系統事典」は、いまではほとんど失われてしまった 神道の流派の簡単な解説がある。私も、これを読むまではこんなに いろいろいろな流派や教説があったとは知らなかった。「特集検証 争点検証 異端の宗教」では、陰陽道、密教、修験道、古神道、神道の それぞれの簡単な解説とか歴史的に重要な事件などが記されている。 このうち、とくに修験道や古神道については、私はこれまでほとんど 知識がなかったので、こういう小さな特集でも勉強になる。 「特集評伝 「異形」の宗教家列伝」は、役小角、安部清明、出口王仁三郎の 解説である。「特集ワイド 日本宗教事件史」は、蘇我氏vs物部氏の崇仏排仏 戦争、山門vs寺門の天台宗覇権戦争、石山戦争、天文法華の乱、明治の廃仏毀釈 という日本の宗教のターニングポイントになった5つの事件を扱っている。 私はこれで、日本の仏教になぜこんなにいろいろな派閥があるのかの理由の 一端を知ることができた。「特別論考」には3つの論考があり、それぞれ、 古代の民俗信仰、隠れキリシタン、道教の日本への影響を扱っている。 ある意味での極め付けは「特別企画 日本の宗教書 奇書・偽書・異端書総覧」で 非常にカルトな本の紹介が半ページずつ 20 ページにわたって掲載されている。 読んでもしょうがないけど、こんなオタクな本の蒐集をする人がいるのに驚く。 紹介されている本としてはたとえば、中田重治著「聖書より見たる日本」がある。 日本人とユダヤ人が同祖であると説いているのだそうな。