ドーキンス vs グールド

Kim Sterelny 著、狩野秀之訳
原題:Dawkins vs. Gould
ちくま学芸文庫 ウ 14 1、筑摩書房
刊行:2004/10/10
原著刊行:2001
名大生協で購入
読了日:2006/07/30

ドーキンスとグールドの間の進化論の論争が、その中間の立場から 要領良くまとめられている。それぞれの立場とその背景をまとめて どのあたりが論点かが良く分かるようになっている。この種の議論は 素人にはわかりにくいものである。ドーキンスもグールドもどちらも 文章がうまいので、それぞれ読むとそれはそれでその気にさせられるし、 進化の基本的な事実認識に対立があるわけではないので、対立点は けっこう微妙である。そこを要領よくまとめてある。

私は、グールドのエッセイは好きで結構たくさん読んだので、 グールドの論点がまとめてあるところはよく理解できて、 グールドの考えの限界も含めてうまくまとめてあると思った。 ドーキンスの方は、私はほとんど読んでいないので、 今一つ分かりにくい点もあるのだが、まあだいたいわかった。

対立点の第一の、淘汰が作用するのが遺伝子か個体かという点に関しては、 これを読んで考えてみるに、もともとAかBかという問題ではないような 気がしてきた。私に良いアイディアがあるわけではないが、たぶん それらを統合した立場から解決が図られる問題であるような気がする。 その他の対立点に関しても、その中間あるいはそれらを止揚した立場から 解決がおそらく図られるのであろう。そういう意味で、著者が中間的な 立場を取るのも理解できる。ドーキンスもグールドもちょっと過激な 主張をしてみせるスターで、学問を進める力のある人である。 その他の有象無象のエピゴーネンたちが議論をすることで学問が進む。