ギョッとする江戸の絵画
辻惟雄著(辻のしんにょうは本当は点が2つの旧字体)
NHK 知るを楽しむ(月) この人この世界 2006 年 10/11 月、日本放送協会
刊行:2006/10/01
名古屋名駅のジュンク堂書店名古屋店で購入
読了日:2006/11/14
こんな番組があると知ったのは、番組のシリーズの半分近くが
終わってからで、それからテキストを買ってみた。
一昔前には知られていなかった蕭白や若冲を一般に紹介した人として知られる著者が、
蕭白や若冲を含め江戸時代の奇想の画家8人を紹介するという趣向。
スゴい絵のオンパレードで、楽しめる番組、楽しめるテキストである。
シリーズの放送終了前に読み終わってしまった。
- 岩佐又兵衛
- 中世から近世へ、戦国の記憶も残しながら、新しい時代の始まりを告げる画家。
- 狩野山雪
- 狩野派だが、京狩野なので、幕府の庇護がなかった。格調は高いながらも、
歪んだフォルムを好んだ個性派。
[追記 (2006/12/28)] 再放送を見た。もともと幾何学的に単純でない形を
幾何学的に几帳面な縦横斜めの構図の中に押し込めたような奇妙さが
あることを認識した。
- 白隠
- 禅僧で、画は本職ではない。(意図的かもしれないが)下手な絵を
描くいわゆるヘタウマ系。
- 曾我蕭白
- 京都の画家だが、伊勢との関係も深く、三重県にも作品が残されているという
意味で東海地方に縁がある。グロテスクな描写あり、マンガみたいな描写もあり、
筆致も細密なところと大胆なところがあり、まさに番組のタイトルの通り
ギョッとする絵を描いている。
- 伊藤若冲
- 華やかな色彩と装飾的な構図で描かれた動植物が特徴。「鳥獣花木図屏風」が
映されたときは、アンリ・ルソーを連想した。
[追記 (2007/01/10)] 再放送を見た。「動植綵絵」の中の「老松白鳳図」では、
作品の裏に黄色い胡粉が使われているのだそうだ(裏彩色)。
「鳥獣花木図屏風」のタイル状格子と言い、裏彩色の技法と言い、
細やかな技術を使って演出するところが、
いかにも本当に絵が好きだった人らしいし、独特の魅力を生んでいる。
- 長沢蘆雪
- 応挙の弟子で、応挙の手法を受け継ぎながらも大胆な構図を使って
絵を描いている。テキストでも放送でも、「江戸時代の鳥羽僧正」
として、生き生きした動物の絵の巧みさを強調している。
応挙の上品で大人しい絵ではどうしても飽き足らなかったのだろう。
- 葛飾北斎
- 言わずと知れた北斎。独創的でなおかつ堂々としたフォルムは、
他人には真似が出来ない。
- 歌川国芳
- 西洋画の手法を取り入れてみたり、北斎にヒントを得てみたり、
奔放な手法と機知にあふれた画題は江戸の町人の時代の象徴。
後日、これの原点になった本「奇想の系譜」
を読んだ。そちらの読書メモにも関連することを書いた。